私の書き方練習法

 満を持して……というよりネタ切れ。

 正直、正攻法ではありませんので悪しからず。


 私は元は絵描きです。漫画もちょこっとくらいは描けました。同人誌で50ページくらいの短いヤツですが。もちろん、ヘタクソな絵ですんで絵の技量は聞かんでください。


 私の得意技は「モシャス」でして、メタルスライム程度にはターゲットとそっくりに描くことが出来ます。けれど、それはまったく同じに書き写すことが出来るというだけの話で、そのキャラのポーズを変えて描くなんて芸当は出来ませんでした。つまり、絵描きとして必須の「基礎技術」が欠けているということです。


 絵が上手になりたければ、人体の勉強は不可欠です。せめて骨格と筋肉の相関くらいは理解してないと、デッサンもへったくれもないモノしか描けません。ちょっとポーズが変わる、向きが変わるだけで、うんうんと唸らねばならないという状態になるでしょう。描ける人は頭の中に3Dの人体模型が入ってんですよね。


 で、私の頭の中にあるのはかなりオボロゲな3D模型だけです。なので描く時は資料とくっ引き。似たポーズの写真とかイラストとかを何十枚と検索して集め、比較しながら描いていました。


 小説ではこういう資料は不要です。オボロゲな3Dで十分通用します。しかし、本当に小説で必要になるのは、この3Dの人体模型ではないのですね。むしろ、3Dを構築しようとする姿勢、「観察力」の方だと思います。


 なので、二次創作が上達に有効だという理屈も、観察力がキモになってまして、ここを無視した理屈を読んでも意味はないんじゃないかと思う次第。


 私は絵描きの時の経験で、普段から周りをよく観察しています。そこら中にネタが転がってるわけですから、もう目を皿のようにしてジロジロと不審者やってます。


 小説に限らずあらゆる文章において、私はその構造とか技巧を観察します。特売チラシの文言には特売チラシゆえの、街の看板やキャッチコピーにはキャッチコピーゆえの、それぞれの工夫が見えるわけです。それを小説に転用できないものか、という事ばかり考えながら歩いています。


 あるいは、今は秋ですので活動領域である京都あたりに出かけ、そこで出会ったちょっとインパクトのある風景やワンシーンを記憶に刻み付けます。いつか作品の中で使えるだろう、と思いつつ。

 この時に、細部までじっくりと観察し、出来れば写真に収めるなどして資料としての価値を高めておいた記憶は、後々役に立ちます。というより、そのくらいしないと、実際に小説で描写をしようと思った時にはボンヤリしていて使い物にならないのですよね。


 旅行へ行けば、その道すじから色々なデータが手に入ります。家を出るのが朝だったら、朝の空気とか駅舎の色彩とか、通行人の様子だとか。そこから電車に乗れば乗ったで座席の硬さや床や天井の汚れ具合に至るまで、すべてがいずれ描写の役に立つ情報です。見知らぬ駅は一つ一つがまた一つ一つのシーンの元になるでしょうから、停車時間の僅かな間に、あるいは目的の駅に到着して降り立つたびに、そこらじゅうを観察します。訪れた街は描写の宝庫ですよ。


 どこへ行ってもそこには描写の為の資料とデータが転がっています。京都へよく出て行きますが、貴船とか鞍馬あたり、あるいは比叡の山道は、文字通りに山や林のデータを提供してくれます。里山とはどんなものであるのか、未開の地とはどんなものであるのか、頭の中の既存のデータをくっ引きながら整理して収納していくのです。


 テレビに映るなにげない景色も見逃せない情報源です。ダッシュ島とか、最高ですね。廃墟の島がどういうものかをつぶさに見せてくれましたし、大好きです。


 どんな時も観察を怠らないこと、これが積み上げられた時には強みとなります。

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