「文章力」と「文章量」の公式

 文章量が多くなるほどに、文章力は高いところが求められます。


 短編はわりと読者さん的には敷居が低いのでサクッと読んでくれるでしょうが、長編連載となれば、さすがに尻込みされてしまうと思います。


 よく、タイトルが大事だとか魅力的なアイデアがとか言いますが、それ以前の話です。タイトルやアイデアは無関係で、まず文字数が少なければそれだけで読んで貰える率は上がります。場所にもよりますが。


 なろうではかつて、短編は読んでもらえないと言われていましたが、これは間違いです。あの場所ではテンプレ異世界転移モノしか読まれないってだけです。短編とか関係なしに、それ以外はすべて漏れなく用無しでした。様々な要因から読者層がテンプレ読みに固定され、それ以外の読者が少なかったからです。


 現状のカクヨムを見れば解かるように、正常な場所ならば長編よりも短編の方が読まれる率は高くなるのが道理だと思います。人は真っ先にダメージの計算をしてしまうもので、出来る限りダメージの少なくなる方向へ走ります。長編よりは短編へ、暗いよりは明るい話へ、という事です。


 今は知りませんが、かつてのなろうは読者層がテンプレ読みに固定されていたのです。テンプレ読みしかいないから、テンプレ書きしかいなくなったんです。膨大な数の需要と供給でしたが、テンプレ限定でサイクルしていたので、他は目に触れることさえなかったわけです。トップページに載る作品だけが読者の知りえる情報です。


 長編よりも短編が好まれる理由は幾つかあるでしょうが、まず、すぐに終わるという点が上げられると思います。文字数で明確に示されているので読者としては安心です。中には、読み切りと見せて連載予告だったりする詐欺もありますが、その場合でも、読者はその作品を記憶から消去して終わるだけの事です。


 ブラックリストに載る裏切り行為には、様々な種類があります。それはまた後ほどページを割いて報告してみたいと思います。


 短編ならば、読者は気軽に読み始めてくれる率が高いわけです。もし何らか損をしたと感じさせる要素が見つかったとしても、元々短いので我慢できますし、我慢できなかったとしても、損失は少なくて済むわけです。

 時間的損失、労力の損失、期待の損失、そういったマイナスは文字数に比例して大きくなるので。



 では長編はと言えば、これは吟味される事になります。

 なので、タイトルやアイデアが大事になってくるわけです。


 タイトル、アイデア、冒頭部を読んで読者が何を測っているのかと言えば、「面白いかどうか」という事以前に、厳密には「文章量に比較して」この先を読んでみるかどうかを見ています。

 文章量と文章力を天秤の両端に掛けているんです。


 文章力は、読書量に比例してその許容範囲が狭まります。この範囲は、読書ジャンルの偏りにも左右され、嗜好にも影響を及ぼします。


 Web小説を読みなれた読者はWeb小説には寛大でしょうが、文学文芸には厳しい基準を設けて選別するでしょう。彼らにとってはWeb小説が読みやすい形態であり、他は辛いからです。よほど良質の作品しか読まないという事になります。


 一般の小説を中心に読んでいる読者の方では逆になります。一般の文体形式に慣れているのでWeb小説は異質に感じるはずです。感想はそれぞれでしょうが、読みやすいとは感じないわけです。読みやすいとは、慣れですから。


 読みやすいとは読みなれた文体のことです。それはネットの上にあろうが、紙媒体であろうが本来は変わりないはずです。電子書籍が増えていき、当たり前となれば、それまでは紙媒体でしか読まなかった層がネットに流入してきます。

 しかし、彼らがWeb小説を読みやすいと感じることはないでしょう。彼らが慣れているのは、紙媒体での主流、つまり、文学文芸の文体だからです。


 今は単純に、多数派であるところの文学文芸読みがネットに入ってきていないというだけの話です。彼らはわざわざWeb小説など読みません、溢れかえっているWeb文体が全てと思っているし、その奥に埋もれている一般系の作品があることを知らないのです。知ったとしても、氾濫したWeb文体の中から探そうなどとは思わないでしょう。本屋や図書館に行けば、Webに匹敵する規模の一般系がうず高く積まれています。


 なにより、ネットの中には暇つぶしのコンテンツが満載なので、わざわざ違和感を推してWeb小説を読む必要はありません。人は、他に代わりが幾らでもあるなら、わざわざ新規のものに手を出したりはしないので、Web小説を読まない層がWeb小説に手を出すことはありません。


 人は理由がなければ新しいものを手にしないのですが、一般系に馴染まねばならない圧力が世間から掛かる事はあっても、その逆はそうそう起きないでしょう。

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