第13話 『源』

ある男の遺した手記。



――私は遂に、人の身でありながら『生命』を創りだすことに成功した。


此の『超物質』を細胞として用いれば、自然界の生物とも機械とも違う全く新たな存在を、人類の手で生み出すことが出来るだろう。


だが、このあまりにも傲慢な智慧を完成させるには、私の生涯だけでは足りない。


充分な質量の超物質を得るには膨大なエネルギーと時間が必要なのだ。


現時点で作り出せた超物質だけでは、『あの子』の片腕を形成するので精一杯だった。


故に、私はこの夢をまだ見ぬ子孫に託す。


これより惑星の中心に打ち込む超物質の種子は、惑星ほしのエネルギーを糧としてゆっくりと成長し増殖を開始する。

やがては地表にまで超物質が観測できるほどになるだろう。


あるいは自然に分化し、知性を持つ者が現れる可能性すらある。かつて我々人類、生物種の祖がそうしたように――


我が子孫よ。

どうか、人類の永き幸福のために、私の夢の結晶を役立てて欲しい。


超物質により形作られた人造生命体ものたちが我々人類のパートナーとなり歩む未来を夢見て、瞼を閉じるとしよう――――


(西暦20××年 某月某日 穿地げんより千年後の同胞へ向けて)

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