ぼやきいろいろ

豊福 れん

出来ないことばかりしている

第1話 出来ないことばかりしていた

 昔から出来ないことばかりして生きてきた。出来ないことを、どうにかして出来るようになりたい。でも結局できない。それを繰り返している自覚はあるものの、やはり出来ないことばかりやってみたくなる困った性分である。


 初めにそう思ったのは高校一年の頃だった。それまでは文化部に所属し、体育は水泳と柔軟体操以外は全て苦手だった。特に飛び箱と鉄棒が大嫌いで高所恐怖症なのにも関わらず、器械体操部に入部した。家族も親族も仰天していたが、一番驚いたのは自分だった。そして、その仰天されることが、何とも言えないくらい快感だったをよく覚えている。

 しかし、できないものはできないものだ。詳細は別の機会にするとして、全くだめだった。


 もう出来ないことは辞めよう。出来ることを大切にしよう。高校卒業時に固く誓ったはずなのに、結局今もまた出来ないことをしている。

 結婚してからは何故か絵を描くことに目覚めた。子供の頃に得意だったレベルから抜け出すことなく熱は収まり、徐々に文章を書くことにシフトしていった。だが、これを読んでもお分かりだろうが、もちろん大した文才は持ち合わせていない。お小遣い稼ぎくらいは多少できているが、単価の安い簡単な物しか手を出せないでいる。

 出来ないことは楽しい。挑戦することに意義があると思っている。とはいえ、たまには報われたい。わたしに出来ることとは果たして何なのか。答えを見つけるまできっと、出来ないことばかりして過ごすのだろう。

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