第1話 選ばれしもの

 王国から遠く離れた名も無い村。

「こんな山奥まで、騎士団が迎えに行かなければならないとは……」

 5名の騎士が馬車を護衛しながら進む。

「魔法力を持っているというのだ、仕方があるまい」

「今年は8名の子供が王宮入りするそうですね」

「あぁ…年々少なくなっているようだな」

「その力も弱まっているそうだ…いずれは消えて無くなる運命なのかもしれないな」

「そのような!魔石使いが弱体化しても、王国は騎士団が護ります」

「その意気だ!」


 騎士団が村に到着すると、村長が一人の少年を連れて来た。

 身体の弱そうな華奢で色白の子供。

「騎士様、この子が魔法力を持つ子供でございます。名をユキと申します」

「村長…魔法力を持つ子供、我が騎士団が王国へ確実に送り届けるゆえ安心いたせ」

「はい…その子には親がおりません。村の外れに捨てられていた子供です。適性検査で魔法力が確認できなければ…どうなっていたか…」

「魔法力を持つものは貴重なのだ、運の良い子なのだろう」

 ユキと呼ばれた華奢な子供が馬車に乗ろうとすると、馬車に走り寄る子供が一人。

「ユキ!俺も必ず王国へ行くから!必ず行くから!先に待ってろ、約束だぞ!また王国で必ず会うんだ、俺は騎士になる。お前は魔石使いになって…必ず…」

「うん!待ってるよ。タケ…先に王国で待ってるから!」


「坊主…騎士になりたいのか?」

 タケと呼ばれた少年に騎士団長が声を掛けた。

「はい!俺は必ず騎士になります。15歳になったら志願します」

「そうか…ではコレをお前に預けよう…こんな村では剣1本手に入らんぞ」

 そういうと、騎士団長は馬に携えてあった予備のショートソードを一振りタケに差し出した。

「ありがとう」

「あぁ…それを一人前に扱えるようになったら王国へ来い」


 馬車のドアが閉じられ、窓からタケに手を振るユキ。

 2人の目には涙が溢れていた。

 タケはショートソードを抱きかかえながら、馬車が見えなくなるまで手を振った。

「待ってろよユキ…俺は必ず王国へ行くから…お前を1人にしないから…」


 時は流れる…………。

 あれから5年、タケはショートソードを軽々と片手で振り回せるほどに成長していた。

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