予想外の報告



「ハヤト君と別れたの」


 決行の夜から5日目の朝。いつもの食卓で、それぞれいつもの席に座り、いつもの報告会が開かれていた。


 ただいつもと違うのは、なぜかヒナタの顔が僅かに赤らんでいるということ。

 様子が違う妹に対し、兄も疑問をぶつける。


「実は他に気になる人ができて……ハヤト君には私から別れようって言ったんだ」


「えッ?!」


「ッ?!」


 予想外の発表に2人は固まっている。


「その人もね、私のことが好きだって言ってくれたから付き合うことになったの。今度お兄ちゃん達に紹介するね」


 満面の笑顔で「すごく格好良くてちょっとキョウスケお兄ちゃんに似てるかも」なんて嬉しそうに言うヒナタ。


 かろうじて「そうか」と返事をしたものの、妹から誰かに好意を寄せて始まるという今までにないケースに兄2人は戸惑いを隠せなかった。


「次、オレがやるから」


「なぜだ? 順番だと次は俺だろう」


「そうだけど…」


 別に進んでやりたいわけではない。

 男が好きなわけでもない。


 ただなんとなく、キョウスケがこれ以上誰かに触れるのが嫌だった。


 そんなこと口が裂けても言えないが。


「ホラこの前オレ失敗したし。ていうか兄貴男に興味ないって言ってたし、ああいうことすんの苦痛でしょ? だったらこれからはオレが全部担当するからさ、兄貴はどうすればいいか指示出してよ」


 目を合わせられないまま、半ば無理やり納得させるかのように一気に畳み掛ける。


「……男に……興味あるのか?」


「え?」


 アオイは自分の本当の想いを隠すことに必死で、キョウスケの小さな問いを聞き逃してしまう。


「いや……何でもない」


「今度の彼氏、良い奴なのかな」


 良い彼氏であればヒナタも傷つかずに済むし強行手段に出ることもなくなっていいと思う反面、今までそれによって繋がってきた兄との関係が解消されることを寂しくも思っていた。


「良い奴が来なければいいという口ぶりだな」


「あ、ヤ、そんなことないよ」


 同じ目的を持つ同志ですらなくなれば、兄とは本当にただの兄弟に戻るしかなくなる。


 むしろ、その方がこの感情も無くなって良いのかもしれないという気持ちもよぎり、アオイは自嘲気味に笑った。


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