勘違い男子の仕置き方



「そこまでだ」


 まるで雨や雷の音さえも一瞬止まったかのように、低音の声が鮮明に聞こえる。


「……あに、き?」


 閉じていた目をゆっくり開けると、全身びしょぬれになったキョウスケがそこにいた。


 朝は綺麗に整っていた黒髪は雨によって崩れ、ぽたぽたと雫を落とす。


「……何してる」


 キョウスケにしっかりと腕を掴まれたハヤトは、だらしなく下半身を晒したまま固まっている。


 無理もない。無表情ながらもキョウスケからは明らかな怒りがみえ、ハヤトを睨みつけるその気迫はまるで刃物のように鋭かった。


 ここまで怒っているのは久しぶりかもしれない。


「兄貴、なんで、今日は……」


「嫌な予感がした。当たったようだな」


 アオイの首もとに付いた赤い痕や、散々いじられた性器を目にしたキョウスケの眉間に深い皺が刻まれる。


 そこからアオイの手枷を外し、かわりにハヤトの手首に装着するまで目にもとまらぬ早さだった。


「ちょ、待てよ! アンタいきなり入ってきてなんなんだよ! 誘ってきたのはアオイだし、だいいちコイツとどうなろうとアンタに関係ねーだろーが!」


「……?」


 勢いを取り戻したハヤトがどんなに勇んでも、更にキョウスケの怒りを買うだけ。


「兄貴ごめん、しくじった……」


「話はあとだ。こいつを片付けてから聞く」



 ◇◆◇◆




「ン、ふッ……ァ!」


「ほら舌が止まってるよ。兄貴に扱かれるの、そんなに気持ち良いの?」


「まだイクなよ」


 さっきまでアオイの上にまたがり快感を与える側だった男が、今はアオイ自身をくわえながらキョウスケによって快感を与えられる側にいた。


「女しか興味ないなんて嘘でしょ。十分素質ありそ」


「そうだな。試してみるか、素質」


 キョウスケは湿らせた2本の指をいきなりハヤトの後ろに突き挿れる。

 悲鳴とも取れるうめき声がハヤトから漏れた。


「キツいな」


 そう言うと、慣らしもせず予告なく指を3本に増やす。

 まだ受け入れる状態ではなかった後孔がギチっとこわばり僅かに血が滲んだ。


「あ゛が、ぁぁ……ッ!」


 ハヤトは痛みと異物感から涙を流し、悲痛な声を部屋に響かせる。


 その性急な行動は、キョウスケの怒りが未だ収まってないことを物語っていた。


 まるで本当に罰を与えているようだ。


「兄貴、怒ってる……?」


「…………」


 まさか、ハヤトが自分をなぶったことに対する怒り?

 少しは大切に思われているということなのだろうか。


 今この瞬間、兄が妹ではなく自分の為に感情を見せている、そう思うとアオイの心臓は早鐘を打った。


 ずっとずっと欲しくて手に入らなかった物を初めて手に取ったような昂揚感。


(オレ、なんでこんなドキドキしてんだろ……)


「ふ、ン、あぁ」


 いつの間にか恍惚の表情を浮かべだしたハヤトが、声を漏らしながらアオイ自身を夢中で愛撫している。


「そろそろか」


 キョウスケは3本の指をズルリと抜き取ると、彼自身をハヤトの後ろへとあてがった。


 わずかに期待の表情を浮かべるハヤトとは反対にアオイは慌てて制止する。


「ち、ちょっと待って兄貴! もしかして挿れるの……?」


 当たり前だと言わんばかりにキョウスケは少し眉間にシワをよせた。



 嫌だ。


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。



 アオイは純粋にそう思った。

 やっと手に入れたものを取られる感覚に支配される。


 とはいえ、この男をはずかしめるという目的を忘れたわけではない。それには不可欠なことなんだろう。

 そう無理やり言い聞かせた。


「いや、ゴメン。そうだよな。何言ってんだろオレ……ごめん」


「…………」


 ひとつため息を吐いたキョウスケは、ぐいと自分の腰を進める。

 だが、押し進めた先はハヤトの後孔ではなく内腿うちももの間だった。


「なんでッ! 挿れろよぉ!」


 キョウスケの指づかいにすっかり夢中になったハヤトは、恥ずかしげもなく腰をくねらせキョウスケのモノをねだっている。


「黙れ。お前の要望を受け入れるつもりはない。イかせてやるだけありがたいと思え」


 一度は不満を口にしたハヤトだったが、後ろから乱暴に股を擦り上げられる刺激に再び夢中になっていった。


「兄貴……」


 ハヤトの腰をガッチリとつかみ律動を繰り返していたキョウスケと目が合う。


 相変わらずの無表情ながらも額には汗が浮かび眼鏡の奥の目が色気を帯びていて、いつも冷静な兄が見せる別の顔にアオイの下半身がずくんと揺れた。


(セックスするときこんな顔してんだ)


 くわえていたハヤトが、質量を増した性器に興奮した様子で上下する速度を上げる。

 思わずクッと声が出て少し恥ずかしいとアオイは思った。




 この場にいる誰もが限界が近いことを感じていた。

 キョウスケの律動も激しさを増し、その振動がハヤトを通じてアオイにも伝わってくる。


 ハヤトの身体が一際大きく波打った。


「あぁ! アァァァ、イクッ!」


 頂点に達したハヤトに引きずられるように2人も白濁を放った。


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