※幕間→日常・ヴァン・ビューレン

 退屈じゃのう。


 「何故なぜ我には手先がおらにゅのじゃあ!」


 神とは名ばかりの様じゃ……我は哀しいぞ!

 なんてまあ、いつも退屈そうにしているのが我なのじゃが、一抹の楽しみと呼べる位は持ち合わせててな。


 「ふぅ……【人間観察キル=タイム】」


 既に言い慣れた詠唱を終えると、白い床は透過し、遥か異世界に浮かぶ島国にピントを合わせた。楽しむための下準備である。


 「今日は何をやらかすにょか……」


 実にわくわくするのぅ。

 

 「視点は――花鶏哉太へ」


 日課とも呼べる観察が、今日もまた、始まった。

 ちなみに、奴の名前は読むのが難しい。もちろん『はなとり』なんて極端な読み方をすれば笑われるじゃろう。しかし、正しく読めとい返してしまえば笑えなくなる。現に、今観察している世界には言語が多く、その中でも特に難読と呼ばれているのが、他ならぬ漢字――当て字と呼ばれるネーミングセンスなのじゃから。


 「どれどれ……」


 前屈みになり、難読の男を探し始める。ちなみに、我の衣は丈が短めなので、他の神には見られたくない光景じゃ。

 話を元に戻そう。

 我の観察の対象となるのは、人間の男――花鶏あとり哉太。数年前から観察を続けておるのじゃが、別段ギャグのセンスが高かったり、素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれる様な輩でもない。

 そんなクソつまらない人間に、我は引き込まれているのじゃ。特別な理由なんかないがの。奴には、があると思っている。

 その理由は、まだ解らない。


 『いってぇ――――ッ!?』

 『あっ、ご、ゴメンね? 花鶏君』

 『ああいや、大丈夫だから……いつつ』


 我がつまらない話をしている間にも、局部を女の子の縦笛に打っておった。


 『花鶏ィ! 平気か? 抜ける?』

 『ああ、乳チンが抜けて永久チンに――ってなるか!!』


 くだらない……じゃと………!?

 暫く観察を続けたのじゃが、奴の発想には毎度驚かされるばかりじゃな。延々と激痛に悶えながらも、ノリツッコミのペースは衰えず、当の本人も楽しんでいる様じゃったし。Mなのか? こいつは。


 『花鶏以外は席に着きなさい。そして花鶏……トイレ行くか?』

 『ああ、はい。じゃあ、連れてって下さい』

 『おう、どのホモがいい?』

 『そうッスねぇ、今日は草食系の佐藤で――って俺ホモじゃねえし!?』


 ひたすらに下品なネタを降られておる。そういうイメージが強いのじゃろうが、我的には自宅でやっている普通のネタの方が面白い。

 このまま続けてウケないと作者が気付き始めた辺りで、今日の人間観察は終わりにしておこう。


 □■□■□■


 次なる暇潰しへの準備中、知り合いの【アマテラス】から連絡があった。


 『なんだっけ、あんたのお気に入りがさぁ―――死んだよ、今日の夜』


 ――ふむ、チャンスじゃの。

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