ご飯を食べて栄養補給

 食料を捜しに行くと言ったな?

 その必要性が特に無い事にすぐ気が付いて、俺は結局その場に留まっている。

 トリケラトプスは草食恐竜。

 草食恐竜の主食は植物。

 植物なら目の前にいっぱいある。

 ここは森の中。植物がいっぱい生えていて当然。

 イコール食うに困らない。

 ここは俺にとってのパラダイスだったのだ。

 元人間だった俺は生えている草をそのまま食べるのに若干の抵抗はあった。

 が、直ぐにもう自分は人間じゃない。恐竜だ。草食恐竜トリケラトプスなんだと軽く自己暗示もとい自己の再確認を行い、草を食べる抵抗を無くす事に成功。

 そんな訳で俺は今もっしゃもっしゃと近くに生えていた背の低い草を食んでいる。

 ……うん、味は悪くないかな? ちょっと苦みがあるけど、それが逆に癖になる。

 俺が食っているのは見た目的に蒲公英っぽい形状の葉っぱで、花の形も正に蒲公英そのもの。ただし、花弁の色は黄色じゃなくて紫色だけど。

 紫蒲公英の葉を食べた後は、そのまま茎ごと花も食ってみた。花は仄かに甘味があったけど、ちょっと薄すぎて不味い。これなら無味だった方がマシだったな。

 この紫蒲公英は葉だけを食べようと決め、近くにあった紫蒲公英の葉を次々と食べて行く。

 流石に大量に葉を食べると苦味で舌が痛くなるな。あと、心なしか胃もたれしてきた。

 俺は池の水を飲んで口直しをすると、今度は別の植物の葉を食べる事にした。

 俺が標的に選んだ植物はクローバーっぽい奴。普通は三つ葉が多いクローバーだけど、目の前に群生する奴等の葉は最低でも六枚。最大で八枚まで付けてるのがあった。

 六つ葉のクローバーってどんな意味があったっけ? 四つ葉のクローバーは幸福と幸運って意味があって、五つ葉は経済繁盛や財運。七つ葉のクローバーは無限の幸福という四つ葉を上回るラッキー度合というのは覚えているんだけど、六つ葉は何だったっけ……?

 あと、八つ葉のクローバーの意味も分からないな。 四つ葉の二倍だから幸福度合いも倍? でも、それだと七つ葉に負けるよな。

 あー、何かうだうだ考えててもあれだし、ぱくっと行きましょう。

 俺はクローバー軍団を口の中に入れ、咀嚼を開始して舌で味わう。

 もぐもぐ……ごっくん。

 味は紫蒲公英よりもかなり薄い。

 と言うよりも、殆ど無い。微かに青臭さがあるかな? 程度の風味があるだけだ。

 可もなく不可も無く、それでいて抵抗も無く食べられる。ただし味気が無いのですぐに飽きる。

 まぁ、食えない訳でもないからいいか。

 はい、次行ってみよう。

 六つ葉のクローバー群から少し離れていた所に咲いている赤い花を咲かせた植物に目をつけ、のっしのしと歩いて奴の前まで向かう。

 見た目は……何だ? パンジー、だろうか?

 それにしてはやけに真っ赤な花を咲かせているな。まるで血のような色合いだ。

 自然界では赤と言うのは毒がありますよと自己主張している色だと聞いた事がある。または、それを真似て食べられないようにしている植物もいるとか。

 俺は身の安全を考え、この血のようなパンジーは食べない事にした。命は大事に。

 パンジーから目を離し、近くに生えていた単子葉類を食んでみる。固いし青臭いし、味も最悪だったので口に入れた分だけ呑み込んでこれ以降はこの単子葉類は非常時以外は食べないと心に決める。

 もし、これが成長したら米とか麦とか、トウモロコシとかの穀物を実らせるのであれば食べる価値はある。葉じゃなくて実の方だけど。けど、仮に実るとしても、そこまで成長するのにはまだまだ時間は掛かりそうだな。背丈は俺の目線より少し高いくらいだし。

 あ、米の可能性はないか。ここ水田じゃないし、地面もそこまで湿ってる訳じゃないし。

 どちらにしろ、現状では確認の仕様も無いので、この単子葉類は放っておく事にしよう。

 単子葉類を避け、今度はドクダミ草っぽい奴を発見。食してみる。

 ……紫蒲公英以上の苦みが。

 これは、完全に薬ですわ。

 即座に水で胃の中に流し込み、更に口をすすぐ。

 次、池から少し離れた生垣っぽい所へと向かう。

 そこには、ベリーが生っていた。

 ストロベリーと言うよりはラズベリーのようにつぶつぶがいっぱいある奴だ。色はまさかの緑色。

 これ、絶対熟してないだろう。と思われるが近付いて臭いを嗅いでみると、甘い香りがする。

 ……食べてみたい欲求に駆られ、俺は試しに一つ嘴で摘まみ取り、口の中に放り込んで噛む。

 おぉっ⁉

 これは……まさにベリー!

 ブラックベリーとブルーベリーを合わせて二で割ったような感じの甘味が口内に広がる。

 これは、うーまーいーぞー!

「きゅぁい!」

 思わず喜びの声が出てしまった。

 このベリー……グリーンベリーと命名しよう。グリーンベリーはまだまだ生っている。思う存分食べるとしよう。

 俺は次々とグリーンベリーの実を摘み取り、口の中へと運んで咀嚼し呑み込んでいく。

 十個ほど食べ、残りは明日に取って置こうと思い、断腸の思いでグリーンベリー狩りをやめる。

 さぁ、次だ次。

 次の獲物はど・い・つ・かなぁ?

 と。足を踏み出した時急に身体がぐらっと傾いた。

 そしてそのまま俺は横に倒れる。

 え? あれ?

 立ち上がろうとしても四肢に力が入らず、それどころか変な痙攣までし始めた。

 あと、身体が寒いし、とてつもなく気持ちが悪い。吐き気が……。

 俺は吐き気に抗えずに胃の内容物を外に吐き出していく。

 その際に、何か泡を吹いてしまった。

 あぁ、視界も霞んでいく。

 これ、絶対毒物食べちゃったなぁ。

 一体、どれが毒だったんだろうか?

 ……駄目だ、もう、意識も…………。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。





















「何? この動物?」

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