第15話お姫様と魔都レヴィス5~囚われ姫の誘拐~

「さすがに歩き疲れちゃったわね」


街の中央にある噴水広場でリルラと共に噴水の側に腰掛ける。


「あはは、楽しかったのだ!」


「そうね、楽しかったわ」


「今日来てよかったのだ?」


「えぇ、来てよかったわ」


「えへへ、それは良かったのだ!」


「それにしても、少し喉が渇いたわね」


「飲み物買ってくるのだ。シンシアはここで休んでるといいのだ!」


「えっ、悪いわよ。そんなの」


「いいのだ!リルラ美味しいお店を知ってるのだ!ちょっと待ってて欲しいのだ!」


「……そう、それじゃあお願いしようかな」


「いってきますなのだー!」


人混みが多い中、リルラはスルスルと消えていった。


「リルラは元気ね……」




そういえば、どうしてリルラは魔王に仕えているのだろう。


ヴァンの言葉も相まって、シンシアはリルラの過去に興味を抱いていた。そもそもあのような歳でどのようにして魔王と知り合ったのか。仕えることになったのか。


リルラと出会って20日、しかしシンシアはリルラのことについてあまり知らない。


何度か聞こうとしたが、上手くはぐらかされることがしばしばであった。


「付き合いは短いけど……知りたいと思うのは悪いことかな?」


シンシアにとっての初めての友達。


だからこそ、相手のことを知りたい、知っていきたい。





そんなことを深く考えていたシンシアを━━。


突如何者かが襲った。


「うっ……!」


睡眠魔法をかけられ、シンシアは上体をぐらつかせる。


なんとか耐えようとするも、魔法耐性のないシンシアには防ぐことはできず。


「リ……ルラ……」


そのまま眠りについてしまった。





「……ここは?」


薄暗い部屋にシンシアは手を縛られて座っていた。


周りを見渡すと、同じように魔族や人間らしき女性がシンシアと同じように縛られている。


「もしかして……ここが誘拐してるっていう!?」


「おい、お前出ろ!」


目の前に獣型の魔族が進んできて、シンシアを連れていこうとする。


「くっ、離しなさい!」


「暴れんな!」


抵抗しようとするも、手を縛られている状態では逃れることは叶わない。


先程までいた場所は地下だったのか、階段を上ると広間に出た。


そこには━━━。


「ひっ!?」


数えきれないほどの魔族がいた。


そして豪邸を思わせる広間の2階には玉座があり、そこには三メートルを越える魔族が腕を組み待ち構えていた。


恐ろしい人相と屈強な肉体は、相対するだけで相手を畏縮させる。


シンシアは玉座の前まで連れてこられた。


「ほう、なかなかの上玉ではないか」


「へい、先程見つけたので捕まえてきました!」


「そうか、ご苦労だったな……うん、こやつ人間か?」


「へい、街中を普通に歩いていましたよ」


「くっくっく、魔族が巣くう街を堂々と徘徊するとは、気に入ったぞ人間。名前を聞こう」


「おら、とっとと答えろ!」


「……シンシアですわ」


「ではシンシア、貴様は俺様が相手をしてやろう……おい、下がれ」


魔族が玉座から下がっていく。


「いったいなにを……」


「何をだと?男と女がやることなど一つしかなかろう」


その言葉に、シンシアは目を見開く。


「まさか……」


「そうだ、女を抱く・・・・以外にやることなどないだろう。ありがたく思うといい」


「くっ、誰が!」


「くっくっく、強い眼差しだ。その眼差しが絶望し、快楽へと沈む様を見るのも一興」


「この外道!絶対に私はあなたなんかに屈したりなんかしない!」


「威勢がよくとも、いずれ分かるだろう、絶望の味を。そもそも助けなど来るはずもない、俺に逆らう者などこの魔都にはいないのだからな」


「……あなた達は魔王には逆らわないんでしょ?こんなことが許されるとでも?」


「……魔王?くっくっく、はっはっはっ!」


ガルディは堪えきれないと言った風に笑う。


「魔王に逆らわなかったのは親父が腰抜けだったからだ。俺様は違う。どうしても膝を折ってほしいなら、力を見せてみろということだ!……まぁ、こんなところに魔王が来ることはないがな」


ガルディが立ち上がり、シンシアに近づく。


シンシアは逃げようとするも、ガルディの手に握られ、身動きがとれない。


「では、始めるか」


「うっ……」


姫が諦めかけたとき━━━━。








屋敷の入り口が吹き飛んだ。


「きゃっ!?」


「……なんだ、今のは?」


魔族が警戒しながら、煙が立ち込める方を見続ける。


すると煙に影が映り、徐々に晴れていく。


そこに立っていたのは━━━。






「シンシアー!飲み物買ってきたのだ!」




両手に飲み物の器を持ったリルラだった。













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