(3)洋梨と柿

 みづきさんが洋梨と柿を持ってきてくれた。洋梨五つに柿七つ。

 何でもみづきさんと同じ市杵嶋姫命の女官候補の一人が農家さんの手伝いをして大量に貰ってきたとか。

 早速一つずつ剥いて食べてみることにした。

「洋梨美味おいしいね。トロっとして」

「そうだな、この柔らかくねっとりとしていながら口の中でさらりととける感じが実に美味うまいな」

「柿の方は……、あー、ぼく、もう少しシャリシャリしてた方が好きかなー。柔らかいのはちょっとね」

「……」

「……? どうしたの、みづきさん」

「そこに直れ、仙太郎。固い柿など邪道だ」

「え」

「なぜねっとりとしている洋梨を美味びみと言いながら固い柿を好む! 許せん!」

「ゆ、許せんって――」

「わたしは筋が通っていないものは嫌いだ! 柔らかい柿に謝れ!」

「そんな、好みの問題だと思うんだけど!」


 果物の食感って重要だけれども、それで怒るみづきさんと怒られるぼくは、たぶん、今日も平和です。

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