7/秘め事(Weigh Anchor)


 /


 ニンゲンは元より人魚でさえも知らない。

 地図にも海図にも載っていない、文字通り“誰も知らない”深海で。



 ――彼は、


《貴方に何が支払える?》


 と対峙していた。


「困ったね。“オレ”には何も無いンだ。命でさえ、拾ってもらったモノだしね! あっ名前も無いDEATH!」


「なので! キミにはを払おう! でもキミ、富にも名声にも興味ないだろう? だから、イイかなって!」


《良いとは、何が?》


「払えるものがないから、、ってね!」


《――――》



「だからさ! 海賊らしく“奪う”ことにするよ! オレのモノになれってさ! HAHAHA!」


《…………≪私≫の何を奪う、と?》


「さしあたっては心とか視線とか? 首輪とかそういうのってナンセンスだよね! 何より【自由】がない!」


《≪私≫は貴方の全てを独占する。》


「HAッ! イイね。そういうの好きだぜ。――でも、キミにできるかなァ?」


 ――オレの心を奪うことはこの海の全てを手に入れるよりも難しいぜ、と。


【ソレ】に対して言いのけた。



《では。》


「……oh」






《嫉妬深い、というのは知っているでしょう?》


《それで、貴方は≪私≫に何を望むの? 力? 不老不死?》


かな! これがないと最初の一歩すら始められないからね!」


《同感。》


「じゃあ始めよう。自由の為に。キミはなんだろう?」


 ――人魚の加護も無い、溺れかけの人体。



 彼は水中で高らかに、キセキにカタチを与える台詞を叫ぶ。


 左手の薬指に、浮気を律する黒い輝き。



『さぁ――       !』


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