出会い

 学校。わたしはここにいる時間のほとんどを、空気のように過ごす。


「あそこだけ気味悪いんだけど」


「本当、幽霊みたい」


 クラスの女の子たちが、こちらを見てクスクス笑いながら話している。こんなのは日常茶飯事だ。


 そんなことを気にしている余裕はない。


 今は今朝の奈々ちゃんの言葉。彼女はコンビ解消の理由を答えてはくれなかった。


 なぜ解消になったのか。


 わたしの頭の中は、そのことでいっぱいで、考え事をしながら6時間目の体育に備え、体育館に向かっていた。


 それが悪かったのだろう。


「柊さんっ!」


 クラスメイトの声がかかった時にはもう遅く、わたしは誰かと思い切りぶつかってしまった。その衝撃でわたしは転ぶ。


「君、大丈夫?」


「あ、だ、大丈夫、です…」


「はい、コレ。それからその長い髪、まとめておきなよ」


 ジャージが入ったバッグを受け取り、頷く。


「あの、すみませんでした…」


 そそくさと、その人の横をすり抜け、体育館へ向かった──はずだった。


「!?」


 わたしの腕が、しっかりと握られている。


 恐る恐る掴んでいる人を見ると、彼はニッコリと笑っていた。けど、その笑みは、なんだかとても恐ろしく見える。


 いつの間にか、周りには誰もいない。


「君、ひいらぎ 琴音ことねでしょ?」


「なんで知って」


「今日からよろしく。“ 落ちこぼれ ”の死神サン」


「!!」


 彼はわたしの腕を離し、帰っていく。


 あの人が、Aランク…。


 去り際の、酷く冷たい目が、頭から離れなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る