朝起きたら息子が二人になっていた件について

朝起きたら息子が二人になっていた件について①



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 惑星に寿命があるように、世界にも寿命がある。



 そして、この世界にも当然終わりが来るのは必然だった。


 


 10万年前、確かにこの世界は終焉を向えたのだ。



 新たなる世界が生まれ、新しく時が刻まれる筈だった。



 が、世界は滅ばなかった。



 歪み捻れた枝を、ユグドラシルと呼ばれる数多の世界の集合体は見つめる。


 

 このままではこの歪は次元を越え、束ねる全ての世界に影響を及ばすだろう。



 ユグドラシルは何度も枝を切り落としたが、枝は何事も無かったように元に戻る。


 他の世界が危ないと感じたユグドラシルは、世界を内部から消滅させるべく黒光りする小さなエネルギーを枝に送った。


 他の全ての世界を救う為、気付かれる事無くその世界で力をつけ一気に消滅させる只それだけの為に。



 僕は創られたんだ。


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 実に爽やかな朝だ。



 空気もおいしく、空も青い。


 いつも通り激しい空腹で目覚めた俺は、かけていた眼鏡をもう一度丹念に拭いてからかけなおして目の前の光景を凝視した。



 「助けてぇ、コージぃ~くっついちゃて離れないのっ!」

 


 困惑しながら金色の目を潤ませて、頬を赤く染めプルプル耳を震わせる俺の嫁。



 その上半身裸の所に吸い付く二つの頭。


 


 ちぱちぱ!

   

    じゅううううう!




 「うにゃああああああ!」




 あーもー…。 




 「ソレは俺のだっつってんだろうがあああああ!!」


 「ちゅぼっ!」


 「ぶじゅっ!」


 俺は容赦なく引っぺがしたい衝動を抑え、吸い付くお口をゆっくりと張りのあるBカップに傷をつけないように剥ぎ取る!



 「大丈夫か! ガリィちゃ!? つか! なに与えてるの???」


 「だって…お腹すいたって…」 


 「出ないでしょ?! え? 出るの??? 獣人出るの!? いや! 出てもダメよ!?」



 これ、俺のだし!



 思わずもちっと掴んだら、『うにゃん!』だとぉお!?



 なのこの寝覚めのエロス!



 たまんねぇ_______ぶじゅううううううう!



 「うぶぶっつ! べっ まてっ! まだ飯食っ_____」


 

 Bカップに見とれた側面から、毎朝恒例の飢えた小さな唇が獣のごとく俺の口腔内を貪りなけなしのエネルギーを吸い上げにかかる!



 朝飯前の激しいバキュームやみておねがいー!


 下手すりゃ死ぬ!


 死んでまうーーーーーー!


 

 「けぷっ」


 満足げにうっとりする亜麻色の髪の幼児が、瀕死の俺に馬乗りになってる…そしてその背後には______あれ?



 黒い髪。


 黒い目。


 少し浅黒い肌。


 色違いの同じ顔が、二人で俺を見下ろしてる。



 え?


 ナニこれ?


 俺死ぬの?




 「こら! めだよ! キリト! キリちゃん! コージを食べるならちゃんとご飯をあげなきゃ!」



 俺に群がろうとした飢える二匹の小さな獣が、腰のあたりの布をむんずと掴まれひょいと持ち上げあられる。



 「う~まんまぁ! おなかすいたー」


 「…」



 粗末なおそろいのシーツを体に巻いただけの中で、手足をぱたぱたさせる二人はガリィちゃんを不満げにみあげた。



 そんな二人に『め!』なんて言ってるガリィちゃん可愛い…マジで嫁ってかんじ…って!



 「ちょっと待て! いろいろ突っ込ませろ!」



 ブドウ糖切れの回らない頭を抱えてふらつきながら体を起こした俺を、『どうしたの?』的な表情で三人がカクンと小首を傾げる。



 俺は取り敢えず全員に『お座り!』といってその場に座らせた。




 「…まず、ガリィちゃん! いくらお腹がすてるっつても、吸わせちゃダメ! 飯は俺がやるからソレ…つか、お前は俺のだから! おk?」



 「う うん?」


 

 自分でも言っててちょっとヤバ目な発言に、耳をへにょっとたたみちょっと意味の分かってないガリィちゃん。



 次に、ガリィちゃんの隣でちょこんと正座するシーツにくるまった食欲モンスターに視線を移す。



 「毎度毎度…遠慮すんなとは言ったが…せめて俺が飯を食うまで待ってくんないか? ガチで死ねるってばよ!」


 「だって…こっじ、おきないんだもん…」


 

 ぶーぶーと文句を垂れる赤ん坊…最近のこいつはぼーっとしてた頃とは違ってなんだか生意気になったがそうしてると何だか『普通の子供』って感じがして面倒臭いが嫌いじゃない。



 まー…最近確かに寝不足で起きるのが遅い俺にも責任はある。



 コイツにとって俺だけがこの世界で食える唯一の『食糧』なのだから仕方はないんだけどさ…。



 「んで…」



 俺の視線は、赤ん坊の隣にちょこんと全く同じ体勢で座る『もう一人』をとらえる。



 「もしかしなくても、お前『魔王』か?」



 ぱくぱく。



 声を出す機能までは再現できてないのか、音もなくまるで金魚のように口を動かす。



 『そうだ』



 そう見える。



 「こっじ! まおうじゃないの! キリちゃんなの!」


 

 赤ん坊がむーっと、頬を膨らませて俺をキッとにらむ。



 「キリちゃん?」


 

 「そだよ! ぼくたち『キリト』なの! んで、キリちゃんはキリちゃんなの!」



 赤ん坊は、自分達を『キリト』と名乗り『ね! キリちゃん!』と黒髪の自分そっくりに化けた魔王にぎゅーっと抱き付く。


 

 「なんだそりゃ? ん? キリト…」


 

 「ん、こっじ! ぼくらにおなまえ ありあとー!」

 

 

 赤ん坊____キリトが、とびっきりの笑顔で俺を浮かべた。



 え?


 

 「俺が名前?」



 俺は、思わずガリィちゃんの方を見る。



 「そうだよ? コージが昨日寝る前につけたんじゃない! 『お前達はキリトだ』って」




 なんだそりゃ?




 『大丈夫? コージ? お腹へってるの?』 と、ガリィちゃんは耳をピコピコさせながらカクンと首をかしげた。



 確かに死ぬほど腹は減ってるが、おかしい…まったくもって身に思えが無い…。


 寝不足の所為か?



 俺は赤んぼ____キリトに抱き付かれながらも、じっとこちらを見てぱくぱくと口を動かす魔王キリちゃんを見つめる。



 ここ最近の俺の寝不足の原因は、この『キリちゃん』にあるのだ。

 

 

 この魔王。



 食うとか寝るとか呼吸するとか、生き物としてしなきゃいけないことの根本がなってない…というかする必要がないらしい。



 また、感情も最低限の活動を行うくらいがやっとの希薄なものだと思われコード解析が出来ない所をみるにやっぱりこの世界の生き物ではなくどちらかと言えば魔力の塊かプログラムのような無機質な物体に近いという見立てをたてたのだが…。



 ぱくぱく。


  ぱくぱくぱく。



 キリトに窮屈なくらい抱き付かれた隙間から短い腕が俺にむけて伸ばされる。



 俺は、その伸ばされた小さな手にそっと触れた。




 キン!



 その瞬間、眉間につららでも突き刺さったかのような鋭い痛みが走る!





おしえろ。






   起きる事。



 食う事。



       眠る事。


  歩く事。


         泣く事。

 

    笑う事。


        怒る事。


   言葉。




  文字。

 


   好き。



 嫌い。


    殺したい。



       愛してる。




 しらいない。


 

    よこせ。


 おまえのしってることぜんぶ。



 よこせ。


     ちしき。



 ほしい。


   ほしい。



 ほしい。


 



 なだれ込む渇望。


 乾いたスポンジが水を吸うなんてもんじゃねぇ…!


 不眠不休でどれだけ知識を感情を流し込んでも、まるで流砂のように底が見えない。



 

 ちっ…!



 俺は、ぱっと手を放し不満げな表情をとったつもりの無表情な顔をじっと見る。



 毛色と目肌の色を除けば、やっぱりあかんぼ…キリトにそっくりだ。


 おそらく、魔王はキリトのコードを読み取ってその姿を繕ったんだろう。



 「ね! キリちゃんね、へーんしーん! したんだよ! すごいでしょ!」


 

 相変わらず魔王キリちゃんにぎゅーと抱き付くキリトが、まるで自分の事のように嬉しそうに声をあげる。

  



 その姿はまるで本当の兄弟のようだ。




 …もくろみ通り…思った以上に俺に負担がかかっているがソレを度返しにしても上手くいっている。



 勇者と魔王。



 もしも、この両者が戦わないとしたら?



 それは一体どんな結果をもたらすだろう?



 全てを失うか、全てを救えるのか?



 レンブランの記憶の範疇を凌駕したこの結末は、きっと誰にも分からないだろう。



 「こっじ! はやくごはんたべて! もっと、ぼくらにおしえて!」


 

 ぴょい、っと。



 俺の膝に飛びつくキリトが、食欲と知識欲に飢えた瞳で上目づかいにおねだりする。



 まるで、ひな鳥と同じく初めて見た俺に絶対の信頼をよせるその姿に背筋がむず痒くなった。





 空っぽの器。


 知識と感情の飢餓。



 俺と同じく二人はたいそう空腹なのだ。




 ぱくぱくぱく。




 いいだろう。



 満たしてやる。



 俺の中にあるこの感情も知識も感覚も…全てをもってその願いに答えよう。



 その先にきっと、レンブランのみる事の出来なかった未来と救いがあると信じて。




 「おk-…ちょっと待てよぉ~先に飯食ってから! お前らは遊んでな!」



 二つの頭をくしゃっと撫でる。



 キリトは、『はやくね!』と言ってキリちゃんを立たせ『1.2.1.2あんよがじょうず!』とその手を引く。


まるで生まれたての小鹿のようなへっぴり腰になりながらもキリトについてプルプルと歩を進めるキリちゃんの姿は見た目は5歳児ぐらいだというのにまるで老人介護のようだ。



 うん…仲が良くて素晴らしい。



 

 「コージ、今日はこれだけしかないの…」



 ガリィちゃんが、申しわけなさそうにこの世界で言うところのパンをずいっと俺に突き出す。



 パンと言っても、黒くて固いなんとも不味い一品だが背に腹は代えられないので俺はソレを受けとる。



 「あんがとね~」



 「コージ! もうここから逃げようよ!」




 ガリィちゃんが、もそりとパンにかじり付く俺の肩につかみかかった。




 「コージならこんなの簡単に壊せるじゃない! こんなちょっとのご飯じゃ、コージお腹へって死んじゃう!」



 チビ共の前では気丈に振る舞っていたガリィちゃんは、その目に涙を貯め俺にしがみつく。



 

 震える体。



 俺は安心するように言い聞かせながら、背中からポンポンのようにもふんとした尻尾までを撫でてやる。




 「くじゅ…許せないよ…こんな所に閉じ込めるなんて…コージはキリトもキリちゃんもガリィもお友達も…みんなみんな仲良く幸せになって欲しいだけなのに!」

 


 「まぁまぁ~もう少し…だか___」



 「まてない! キリちゃんとコージならガリィがおんぶする! キリトだって少しは強くなった! 逃げようコージ!」



 あんまり耳元で叫ぶもんだから、耳がキーンとなる。



 

 「はぁ…」



 俺はため息をついてあたりを見回した。



 エルフ領リーフベル。



 そして、ここはエルフ領の誇る女神クロノスを祭る大聖堂…の、中庭。



 緑の芝が風にそよぎ、風車小屋がばしゃばしゃと池の水を循環させるイングリッシュガーデン的なデザインの見事な庭園だ。



 その庭園をぐるりと囲む大聖堂の僧侶及び神官達。


 不眠不休の最大警備の中、俺達を逃すまいと結界を何重にも展開し続ける。



 しかも、コード解析したらその一層一層がガリィちゃんを封印してた『封印の森』の結界の10倍は強力だ!



 どんだけビビってんの!?



 まぁ、確かに勇者だけならまだしも魔王まで復活して戦う処かその二人が仲良くてなんてこの世界の住人には到底受け入れられないのだろう。



 ソレに…。



 俺の視線が、偶然一人の初老の僧侶に止まった。



 ビクッと、挙動不審に震える初老のエルフにひらひらと手を振ってみたんだが_____。




 「ひゃああああああああ!!」



 初老のエルフは、この世の終わりとばかりに叫んで命燃え尽きんばかりに持ち場から逃走する。



 その有様に、緊迫した全てのエルフたちの視線が一気に俺に集まった。



 えー…まーじーでーぇ…。



 エルフ達の目に浮かぶのは、『畏れ』。



 彼らにとって、勇者と魔王をこのような形で従える『俺』と言う存在はやはり脅威でしかないのだろう。




 あの日。



 魔王を連れて砂漠に出ると、そこには数えきれないほどの兵士たちによって囲まれていた。



 聞けば、彼らはこの世界の国家と種族によって作られた連合軍だそうで…カランカ・リーフベル・メイヤの雇主というかパトロンというか上官というか今回の魔王討伐に出資と協力をしていた方々らしい。




 勇者パーティーからの定期連絡が途絶えた事に疑問を抱いて出兵した彼らが見たものが、魔王を抱き中途半端に封印から再生された勇者を連れた俺。



 さぞ驚いたことだろう。



 うむを言わさず囲まれ拘束。



 勇者の使徒の三人だって止めようとしたが、同房を傷つける訳にもいかずノータッチ。



 勿論、ガリィちゃんは皆殺しにしようとしたしキリトだって俺と新しい弟を守ろうとしたが俺が制止した。



 理由があるとするならば、それは情報収集だ。



 はっきり言って、現在の俺はこの剣と魔法の世界で目的地を失い絶賛迷子中なわけで少しでも情報がほしい。


 その為には、ちょっくら捕虜になるくらいの代償を払ってでも相手の懐に飛び込むくらいしなきゃなにも得られない…そう踏んだからだ。



 ま、逃げようと思えばこのコードモードに狂戦士に勇者と魔王がいるんだ問題はない。



 拘束されると同時に、カランカ・メイヤ・リーフベルとは別にされたが俺達は『離れるくらいならお前ら皆殺しだ!』と言う激おこな狂戦士の主張が100%通ってこの陽だまりの中庭に急所結界を張る形で留められたわけだけどね。




 寝泊りは基本あの風車小屋。


 ガリィちゃんは深刻にとらえているけど、食糧だって平均的な量が一日3回きちんと支給されている。



 ただ、食べ盛りの幼児を二人抱えた俺の胃袋からしてみればこんなの雀の涙だ。



 はっきり言って飢餓感半端ないし、頭に糖が回らないから思考が低下しがちでぼーっとするのが頂けないが結構いろんな事が分かってきた。



 まず、俺達を拘束したのはこの世界『イズール』の6大国連合軍。



 エルフの国:シーハンサー


 獣人の国:牙の国


 巨人の国:イデア


 精霊の国:フェアリア


 ドワーフの国:グラン

 

 竜の国:シルバ



 小国やその他種族を含めれば数百は下らないが、それらを取りまとめるのがこの6つの国だ。


 

 まぁ、ここまでは引き継いだレンブランの記憶にもある。



 問題はここから。




 この6大国は、古の昔よりこの世界の滅びを勇者と共に救ってきたらしい。


 確かに、何千年と繰り返すレンブランの記憶にもこの6大国が必ず出てきたし援助・援軍など何かしら加担し勇者を魔王の元へといざなう一端を担っていた。



 種族を越えて、世界を救うため一丸となる。



 何も不審な点はない。



 ただ一点を除いては。



 

 中庭を囲むエルフの僧侶や司教たちの更に後方に控える巨人族の戦士たち。



 まったく違う種族なのに、そこにある共通点。



 ソレは、崇める『神』。




 この6大国の崇める神こそ、言わずと知れた『時と時空を司る女神クロノス』。



 つまりこいつ等は、クロノスの犬だ。



 女神クロノス…その名前を頭に浮かべるだけで、俺の中のレンブランの記憶がなだれ込み腸が煮えくり返る。

 

 

 何千と繰り返す自分の『死』。


 何千と繰り返す『最愛の妹の死』。


 何千と繰り返す『最愛の彼女の死』。


 何千と繰り返す『大切な仲間の死』。


 何千と繰り返す『全く同じ時』。


 

 どんな努力をしようとも、すべてをあざ笑うようにレンブランから何度でも大切なものを奪っていく。




 全てはこの世界を滅びから救う為。



 女神は何度でも巻き戻し繰り返す。



 この世界の民と勇者と魔王を生贄にして。




 風車小屋の横のちょっとしたため池のほとりで、キリトとキリちゃんが遊ぶ。


 遊ぶと言ってもキリトが一方的に話しかけているだけなのだが、まるで本当の兄のように弟を可愛がる姿からはあの二人が殺しあわなければならない勇者と魔王だと誰が信じるだろう?




 俺の脳裏に比嘉の言葉がよぎる。



 『お前は魔王にあわなければならない』


 

 あの時、確かに比嘉はそう言った。


 

 『倒せ』ではなく『会え』と。



 

 もしかしてお前は、こうなる事を知っていたのか?



 霧香さん、比嘉…二人が一体この世界のどこにいるのかレンブランの知識をつかっても見当がつかない。



 不可抗力とはいえ、あの時間軸の狂った白い亜空間で過ごした時とこちら側の時間を考慮しても最低で3年8か月ほど待たせてしまっている。


 早く見つけやらなきゃ…。



 そう思っても、なかなか状況は好転しない流れだが望みはある。




 勇者と魔王。



 この二人が手元にいる以上、二人が戦うなんてこと無いしさせない。

  



 しかし、そうなると当然気になることが一つ。



 比嘉、お前と霧香さん何しにこんな所に召喚されたの?




 俺と高等部の校舎の前であった時の比嘉の口ぶりからして、霧香さんの失踪には明らかに女神クロノスが関与していた事は間違いないはずだ。



 しかし、巻き込まれた俺がたどり着いたこの世界には既に勇者が存在していて霧香さんの行方はようとして知れない。


 勿論、リーフベルやメイヤにも聞いてみたがやっぱり俺以外に人間を見たことが無いらしいしそれらしい噂も無いようだ。



 比嘉とだって、俺があのスライムに刺されて重傷を負ったときのあれっきり。



 一体どうなってるんだ?



 女神クロノスは、なんで霧香さんを連れ去った?



 比嘉に一体なにがあった?



 

 「…早くなんとかしないとな…」



 俺は、情報収集の為にあの初老のエルフの僧侶に取り付けていたコードモードを解除する。



 

 ここでの情報収集はこれ以上得られそうにないし…。



 俺は、しがみついて離れないガリィちゃんのくるんとしたぽんぽんの尻尾をもふもふする。



 「ぅにゃぁ!? こ コージ!」



 「…ああ、久々にガリィちゃんの捕ってきた獲物が食いたいなぁ~」



 それを聞いたガリィちゃんは、耳をピンと立てて俺を見てぱあああっとほほ笑む。




 「うん! いこう! うんと大きなの捕ってあげる!」




 ああ、行こう。



 よろめきながら立ち上がる俺をガリィちゃんが慌てて支えてくれた。



 「キリト! キリちゃん! 行くよ~!」




 ガリィちゃんが呼ぶと、池のほとりで遊んでいた二人が手をつないでよちよちとこっちにくる。

 


 さて。



 東の空にのろしが上がった。



 準備完了ね…アイツら行動早っ!



 逃げるのに別にアイツら必要なかったけど、きちまったモンは仕方ない。



 「コージ…!」


 

 説明などしなくても、何やら気配を察知したガリィちゃんはキリトとキリちゃんを両脇に抱えて俺を見た。

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