海遊少女隊 シーキャット

伊勢志摩

第1話 沖ノ鳥島防衛戦①

 百隻以上の漁船が沖ノ鳥島を目指していた。


 かつて二百隻以上の中国漁船が小笠原諸島でサンゴを密漁、乱獲したことがあったがそれ以来の規模である。


 彼らの今回の目的は沖ノ鳥島の破壊。

 船に積まれているのは網や釣竿ではなくハンマーだ。


 海洋インフラ投資銀行<SIIB>による現状変更のこころみの一つは海洋埋め立てによる領海の主張で、日本は強くそれに反発していた。


 <SIIB>は沖ノ鳥島を引き合いにだし岩を島として370キロメートルの排他的経済水域EEZを主張する日本を非難した。


 そして今回の百隻以上の漁船である。

 サンゴ礁でできた沖ノ鳥島はかつては満潮時にも六つあったが、現在は風化と侵食で残り二つとなっている。

 これを叩き壊してしまおうというのだ。

 そうなったとき日本はすべての権利を放棄するだろうか。

 否、<SIIB>と同様に埋め立て領海を主張するに決まっている。


 同じ土俵に引きずり上げ日本の立場を弱くしようという魂胆だった。

 <SIIB>参加国の意を受け金で雇われた漁師たちが波を蹴たててひた走る。


 巡視船が領海に入らないように警告しているが無駄だった。

 小笠原諸島の悪夢が繰り返されようとしていた。


 漁師たちはエンジンの不調を理由に上陸を求めていた。

 沖ノ鳥島は国の有人化計画によりすでに無人島ではなくなっており、はやくも無理やり接岸した漁師たちと駐在している港湾関係者との間でもみ合いがはじまっていた。



 そこへ一機のジェット機が飛来した。

「巡視船はなにをやっとる。まったく昔ならならとっくに沈めとるぞ」

 パイロットが慨嘆する。

「国を守るのになんのためらいがあろう」

 ジェット機は降下し機種に装備された四門の30ミリ機関砲が火を吹いた。

 たちまち漁船はスクラップにされてしまう。

 算を乱して逃げ惑う侵入者たち。


 港湾関係者の一人がその機体のシルエットを見てつぶやいた。

「震電……いや震電改!」

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