真王様に癒されませんでした

ああ、さすが真王様。

癒しの微笑みだよ。


ブルー・ルリーナの王宮に真王様ご一行様がお見えになりました。

玉座の間に王族や貴族、王宮職員たちが集まってるところです。


真王様の後ろの特級守護戦士ってファリー家の人だったよね。


国王陛下の挨拶の後真王様がみんなの前にでてきた。

「皆さん、無理しないでくださいね」

真王様が柔らかく微笑んだ。

それだけでみんな癒やされた顔してるよ。


ついにご訪問されたんです。

当代の真王 金井カナイ泰人タイト様です。


栗色の短い天パの優しい顔立ちの中年の紳士です。


真王というのは世界に秩序と平和をもたらす存在で逆らえる生き物はいないと言われている。


海すら水を避けたとか聞いたことがある。


もちろんずっと同じ方がしているわけでなく世代交代してるんだけどね。


真王様には三人のお子様が居るらしい。


真王様の子供ってどんな気分なんだろう?


王宮内は案の定仕事にならず浮き足立っているよ。


「真王陛下、町をご案内致します」

リカ王子が極上の笑みで礼をした。


どうも王都の抜け道裏道を網羅してるのがかわれたらしい。


いつもの残念ぷりはどうしたんですか?

瑠璃絹ルリキヌで作られた正装を着た様子はまさに絶世美形の王子殿下です。


やれば出来るんですね。


リカ王子は真王様を案内していった。


まさかに抜け道裏道ツアーなんかしませんよね。


「リカ王子、別人ですね」

思わず見惚れて拳を口元に当てた。

「リカ王子はあれでも結婚したい外国王族ナンバー1 だからな、国内では現状がしれわたりすぎて残念王子で通ってるが」

エアリ先輩がうっとりと真王陛下の後ろ姿を見ながら答えた。

ああ〜あの笑顔に癒やされたんですね。


リカ王子と結婚したい外国人多いんだ……そういや、落とす宣言以来アプローチされてないけど……最高にきれいだけどさ。


「ああ、セレストさん、今日の歓迎会、リカ王子殿下にエスコートしてね、業務命令ね」

盛装ドレスは更衣室にあるわよねとフキイロ様が書類を見た。


今日は完璧な麗しい世継ぎの王女キミだよね。

瑠璃絹の正装に負けてないよ。


私、一般職員なんですがリカ王子をエスコートしなきゃなんないんですか~?


「フキイロ様、リカ王子が一応、エスコートします」

エアリ先輩が先程のうっとりがうそのように真面目な顔でつっこんだ。

この幸せ惚けリア充男め!

「まあ、どっちでも良いわ、付き合ってるんでしょう?よかった、あの子もついに片付くのね」

フキイロ様が麗しい微笑みを浮かべた。

リカ王子は王家では売れ残りセール赤札品扱いらしい。

結婚したいのは外国人ばかりみたいですよ。


「別にリカ王子と付き合ってませんよ」

どこでそんな誤解を? 全然付き合ってないよね。

「リカとデート出きるように配慮するわね」

フキイロ様は嬉しそうにいって去っていった。

難聴ですか〜補聴器つけて下さい。


「セレ、諦めろ一応玉の輿だぞ」

「玉の輿乗りたくないです」

エアリ先輩にぽんっと肩をたたかれた。


残念王子なんてノウサンキュウだよ。


とりあえずリカ王子の執務室にみんなで戻った。

仕事があるしね。


せっかく真王様の癒しのスマイルで癒されたのに。

なんか黒雲が頭の上にかかったみたいだよ。


「歓迎会の準備の確認にいってきますね」

黒雲をどよどよと頭に引き連れて私は動いた。

「うん、セレスちゃんも立派なワーカホリックだね、よろしく」

ミナト先輩がヒラヒラ手を振った。

「ついでにララビタンZを頼む、疲れた。」

目の下熊さん牧場大繁殖中のローランド先輩が手を上げた。


なんか目の下くまさんの行進状態だな……みんな歓迎会出られるんだよね。


そんなこと思いながら廊下に出た。


「セレ、あんた今日も仕事なの? とろいわね」

同期の新人政治官スミレナが廊下の向こうからやって来た。


ベニイロ一級政治官のところに配置されてる未来のエリート政治官だ。


「歓迎会の準備の確認にいくだけだよ」

リカ王子うちの執務室は主に行事とか観光担当だからね。

「ふーん、ところで残念王子と付き合ってるって本当? 星祭りの時デートした上おんぶしてもらって帰ってきたとか? 」

スミレナがキラキラした目で腕組みした。


しまった!こいつの好物は恋ばな、しかも玉の輿系だった!


ひとよんでブルー・ルリーナのやり手ばばあ……くっつく気がなかったのにくっ付けられて……結婚した政治科の人がいたような気がする。


「き、気のせいだよ、見た気がした人メガネかけたほうがいいよ」

ここは逃げるしかないよね、こいつうるさいし。

「私にまかせなさい! 残念王子じゃ相手が不満だけど絶対に結婚させてみせるわ! 」

スミレナが両手を腰に当てて言った。


あんたも難聴かい〜 補聴器屋どこ〜


「ノウサンキュウだよ忙しいからじゃあね」

私はさっさと逃げ出した。


あ、待ちなさいーと声が聞こえたけど田舎モンの脚力なめんなぁ〜


まあ、田舎モンでもトロい人いるけどさ。


なんとか歓迎会場に来て担当者のウステルさんと合流した。


「以上だ」

歓迎会場担当者のウステルさんが満足そうにみあげた。

「きれいですね」

歓迎会場はルリカラーに彩られてきれいに飾られていた。

「ファリアさんはあそこからリカ王子にエスコートされて出てきてくれ」

ウステルさんがそういって瑠璃色の布で飾られた入り口を指差した。

「あのー…他の人でいいんじゃないですか?」

リカ王子大好きな御令嬢とか御令息…はまずいかな?

「リカ王子からファリアさんと出るっていわれてるんで変更なしでお願いするよ」

ウステルさんが予定表をみながら言った。


おい、リカ残念王子、あんたなんて言うことを……


わーん全然真王様スマイルに癒やされないよ〜

そのうち禿げるかもしれないよ〜


とうさん……私今回も記者に追っかけまわされる運命みたいです。

普通の政治官生活送りたいです。

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