第一章その7.悪夢再び四面楚歌

 既に三方は狼達に囲まれていた。神羽屋は一瞬、驚く表情をしたが直ぐに厳しい顔をする。起死回生の手立てを考えるが、なかなか良い手はない。むやみに動くと襲われる。けれども、このままでは二人共やられてしまう…。三方から静かにせまってくる三匹の狼達。後ろに下がるも後ろには塀がある為、逃げ場もない。最後の一手である式神の札にしても仮にこの距離で発動した場合、自分達の命の保障はない。目をつむり考えるも、目を瞑らない時と同じだった。すると、神羽屋が覚悟を決めた顔で語りかけてきた。

「でも、やるしかないわね…」

 "これが彼女の最期の言葉だった"と言われても、おかしくない状況だった。

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