第一章その1.変わらない日常

 あれから数ヶ月が経ち、世間でも話題になっていた不気味な現象は、すっかり遠い昔の出来事のように感じる。自分も含め周りの人達も、すっかり例の出来事を忘れていたある日、妙な噂が学校内外に広まった。それは「絶滅したはずの狼が現れた」というものだった…。

 どうやら、同じ高校の生徒が目撃したという。一時は騒ぎになったものの、野良犬と見間違えたのだろうという事で事態は収まった。丁度、夏休み前の短縮授業だった為、昼過ぎには帰宅する事が出来た。その日の帰り道、幼馴染おさななじみのかみと一連の街の異変について話をした。通学路である住宅街の路地に点在する掲示板には今もなお、行方不明になっている飼い猫達の迷子案内が無数に貼られていた。

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