【完結】日常生活と戦闘中〜セイヴァー〜

日向ナツ

第1話 俺たちの日常

 今は授業の真っ最中。真夏の太陽を浴びて暑苦しいのに、眠気には勝てない。眠気が徐々に襲って来る。あー眠い。昨日もが遅くまで続いた。何個落とせばいいんだと思っていたら、結局朝日が差し込んできてやっと終わった。


 眠いよ。先生の言葉が『眠れ、眠れ』に聞こえるよ。



 と、そこへ鳴り響く



 の音



 ウー! ウー!



 警報に続いて校内放送がかかる。



『敵機、接近中! 正規戦闘員、直ちに戦闘機セイヴァーに搭乗してください。戦闘員は配置についてください。繰り返します。敵機、接近中! 正規戦闘員、直ちに戦闘機セイヴァーに搭乗してください。戦闘員は配置についてください』


「おい、薫。行くぞ!」


 俺と同じく正規戦闘員の持田健太郎が俺の後頭部をはたきながら、先に行ってしまった。筋肉のついた引き締まった体つきは制服を通してもわかる。楽だからという理由でスポーツ刈りにしているのでその体格と髪型から昔のスポーツ選手のようだ。太めの眉の下には意外に丸く大きな黒い瞳がいつもイタズラを仕掛けてくる小学生のようだ。

 あいつなんで、あんなに元気なんだよ。俺と同じく今朝まで戦っていたくせに。



 高校生まで戦闘員にしないと戦えないぐらい人口が減っている。けれど、人類は諦めてない。戦争だけじゃなく通常の生活をし、教育もする。何十年も戦闘だけの状態になり知的水準が急速に下がったのを受けて、この通常の生活と戦闘体制とを両立するということが当たり前になった。それほどこの戦いの歴史は長い。


 奴らがどこから来て何のためにこちらを攻撃してくるのかわからない。海底から来るとか宇宙からだとか、地底説まで飛び出す始末だが結局まだ何もわかっていない。なぜ攻撃してくるのか、目的はなんなのか? わからなことの方が遥かに多い。



 初めて奴らが攻撃してきた時、一機も撃墜することが出来なかった。奴らは一機だけで攻めて来た。それまでの攻撃力では全く敵わなかった。敵はその一機だけで街中を一瞬で廃墟にした。攻撃するだけして奴らは帰って行った。人類は何度も奴らの襲撃を受け続け、足掻きに足掻いた結果ようやく一機撃ち落とすことに成功した。その時には地球上のあらゆる都市は壊滅状態になっていた。撃ち落とした敵機にどんな奴が乗っているかと期待と不安を胸に中を開けたが戦闘機の中は無人だった。だが、敵機の解明には成功したのでそれ以来撃ち落とすことはできるようになった。それから奴らは撃ち落とされるまで攻撃を止めなくなった。


 今日のように今朝方まで襲撃してまた昼前に襲撃なんてこともたまにはあるが、何ヶ月以上も攻撃が空く時もある。奴らの襲撃に目的があるようには思えない。その攻撃は単なるランダムか気まぐれとしか思えない。

 俺ら戦闘員に選ばれた者は戦闘体制がすぐに取れるように、戦闘がなければ毎日訓練所で訓練することになっている。

 例え大学受験が迫った高校生でもだ。まあ、大学に入る時に戦闘員だと若干の優遇措置はとられるらしいが。


 俺は健太郎の後を追って校庭へと飛び出す。校庭は昔は運動する為に作られていたらしいが、最初の頃の度重なる襲撃で全ての街が破壊され、街そのものが作り直しになったので今は昔の形状ではないのかもしれない。校庭の地下に格納されていた戦闘機セイヴァーが上がってくるのを待つ間、配置に着いていた戦闘員に手渡された戦闘服を着込みヘルメットをかぶる。真夏に嫌だなこれ、今朝方までの戦闘の汗を流したばかりなのに。

 俺の戦闘機が上がってきた。戦闘機は人型をしていて、黒の機体にブルーのラインが入っている。機体の胸の部分がコックピットになっていてそこに乗り込めるように開くようになっている。

 戦闘員が用意してくれた階段を上ってさっさと機体に乗り込む。相手の襲撃がはじまるタイミングなどわからない。どこを狙ってくるのかさえも。敵の目的が全くわからないからだ。

 健太郎も後ろで戦闘機に乗り込んでる。手で合図してくる。お互いの無事を祈って。俺も返す。素早く操縦桿を握り戦闘態勢に着く。


 飛行開始。


 戦闘員以外の人間は地下のシェルターに逃げ込む。学校や会社や公共機関などにそれぞれシェルターがあり、家庭にあるのはよほどの金持ちだけだ。

 戦闘員は中学を卒業するとテストが行われ決められる。非戦闘員は絶対に戦闘員にはならない。それと、五十歳以上の者と、戦闘機に乗り込むにはハンディがある者がそれに含まれる。適性テストで点数が低かった者は非戦闘員、次が準戦闘員、そして戦闘員となる。だけど、いつも戦闘機に乗るのはその中でも高い点数を弾き出した正規戦闘員だ。通常戦うのは正規戦闘員。数が足りなくなって正規に繰り上げられるのが戦闘員。なので戦闘員は全員訓練所に毎日通っている。

 訓練所に通ったり戦闘に出ている戦闘員にはお金が支払われている。実際いくらもらってるのかは親が受け取ってるから知らないけれど、命をかけるには足りないぐらいだろう。参加は国民ちきゅうじんの義務だから。

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