先輩、異世界転生するんすか?

@nana777

先輩、異世界転生するんすか?



先輩「チーッス」


後輩「うっす。あ、先輩。休憩っすか」


先輩「おう」


後輩「レジいいんすか?」


先輩「この時間、客いないし田中さんだけで大丈夫っしょ」


後輩「そっすね」


先輩「あー。あと三時間もだりいな」


 シュボッ。


後輩「あ。タバコ変えたんすか?」


先輩「おう。一本どうよ」


後輩「いいんすか。あざっす」


 シュボッ。


先輩「そういえばさあ。最近、おれ気づいたんだよ」


後輩「なにっすか?」


先輩「おれ、異世界転生できるかもしれねえ」


後輩「え。マジっすか」


先輩「マジマジ。昨日の夜、女神さまが枕元に立ってたもん」


後輩「それできるやつじゃないっすか」


先輩「だしょ?」


後輩「やったじゃないっすか。いま流行ってますもんねえ」


先輩「そうよ。これでおれも異世界でモテモテよ」


後輩「勝ち組っすもんね。あの異世界から帰ってきた俳優さん、知ってます?」


先輩「あぁ、村上流星シャイン?」


後輩「そうそう。あのひと、今度ハリウッド進出っすよ」


先輩「うっそ、マジで?」


後輩「あのひとのアクション、ガチっすからね。やっぱ本物の戦場知ってるひとは違いますよ」


先輩「おれも村上になっちゃうー?」


 フウッ。


後輩「あ。そういえば、先輩。異世界転生できるなら、どうしてここいるんすか?」


先輩「お。よく聞いてくれたねえ。実は昨日の夜、おれ無呼吸で死にかけてたんだけどさ」


後輩「あ。やっぱ死ぬんすか」


先輩「そりゃおまえ、転生っていうくらいだから死ぬよ」


後輩「辛えっすね」


先輩「それで女神さまがおれの手を引いたときな。お母ちゃんが遠くから呼ぶの聞こえてさ」


後輩「それで目が覚めたんすか」


先輩「そういうこと。お母ちゃん、マジ泣きしててびびったわ」


後輩「よかったじゃないっすか」


先輩「いや、まあ。そうなんだけどさあ」


後輩「どうしたんすか」


先輩「やっぱ、男としては一旗あげたいじゃん?」


後輩「憧れますね」


先輩「それ邪魔されちまったみたいに感じちゃってさあ。喧嘩しちゃったんだよねえ」


後輩「お母さん泣かしちゃだめっすよ」


先輩「いやあ、わかってんだけどさあ。おれも感情的になっちまってさ」


後輩「じゃあ、まあ。とりあえず異世界転生は保留しときましょうよ」


先輩「そうなあ。まあ、いつでも行けっしな」


後輩「そうそう。それに先輩。異世界行ったらタバコ吸えませんよ」


先輩「……え。マジで?」


後輩「そうでしょ。だってコンビニある保証ないっすよ」


先輩「異世界ってセブンねえの?」


後輩「ないでしょ」


先輩「え。あ。いや、ほら。異世界ってまずスキル振るじゃん」


後輩「まあ、基本っすね」


先輩「『鑑定』あるんなら『喫煙』もあるんじゃね?」


後輩「あってもっすよ? 下手してダンジョンに飛ばされたら、タバコどころじゃねえっすよ」


先輩「うーわ。それ考えてなかったわあ」


後輩「ちなみにどんな世界っすか」


先輩「いや、わかんねえ。聞く前に連れてかれそうになったし」


後輩「危ねえっすね。詐欺なんじゃねえっすか」


先輩「おれもそんな気ぃ、してきたわ」


後輩「まあ、でも。行き先、調べてからでも遅くないんじゃないっすか?」


先輩「そうなあ。やっぱ事前に調べてたほうが、向こう行って死ぬ確立も低いっていうしなあ」


後輩「いま異世界特集の雑誌も多いっすからね」


先輩「どれが本物かわかんねえけどな」


後輩「とりあえず、もう一本どうっすか?」


先輩「もらうもらうー」


 シュボッ。


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