第7話 予感と生徒会

 4月末、少しずつ気温が上がっていくのを肌で感じる。桜も完全に散り、緑が青々している隙間から見える木漏れ日。そんな風景を生徒会室の窓から見ている。まぁ俺たち、生徒会メンバー5人は普段と同じように作業をしている。


「みんな、作業は順調?こっち終わったから手伝うよ~」

「大丈夫ですよ、奏先輩。順調に進んでますし区切りが良いんで少し休憩しようと思っていたところです」


 未琴の言うとおり、作業は順調に進んでいる。作業人数が増えたことと覚えのいい後輩のおかげと言った所だろう。


「ふぅ~休憩、休憩。先輩、少し喉乾きません?飲み物買ってきてくださいよ」

「自分で行ってこいよ。あと、みんなの分もな!!」

「えぇ~それなら一緒に来てくださいよ。1人で5人分はキツイですよ」


 5人分の飲み物を女の子に持たせるのは少し罪悪感がある。しかも、みんなの分もって提案したのは、俺なわけで小春の言うことを承諾するしかないようだ。


「飲み物買ってきますけど何がいいですか?」

「じゃあ、私は緑茶お願いしようかな」

「私は紅茶で」

「会長が緑茶、未琴が紅茶、奈瑠は何にするんだ?」

「私、なんか炭酸で」


 俺は注文を聞き、小春と自動販売機へ向かう。小春と2人で歩くのは少し新鮮だ。

 普段なら奈瑠とかが一緒にいて3人とかはよくあるけど。


「こうして、2人って珍しいよな。なんか新鮮だな」

「何ですか先輩。急にそんなこと言い出して、珍しいとか言ってますけど、最近ありましたよ?2人で歩くこと」


 そんなことあったかな?と考える思い当たらない。


「小春、いつの話してるんだ?2人で歩いた記憶無いけど」

「先輩は歳ですか?おじいちゃんですか?奈瑠を生徒会に加入しようって決めた日、駅から先輩の家まで2人でしたよ」


 あぁ、そうだった。あの時は、奈瑠のことで頭がいっぱいでそれ以外には無関心だった。


「そうだったな。奈瑠のことばっかりで忘れてたよ」


「先輩のそういうところ残念ですね。妹思いなのはいいですけど、過保護過ぎなのはどうかと思いますよ」


 小春にこんな事を言われるのは何回目だろう。過保護と言われればそうなのかも知れない。奈瑠のことはいつも心配で、奈瑠のことになると周りが見えなくなることもある。でも、奈瑠も学園に入り、生徒会に入り、俺が心配するほどのこともなくなって来ているだろう。たぶん……


「小春の言うことも確かだな。奈瑠も生徒会入ったし俺の過保護も卒業さ」

「そうですか。なら、いいんですけど」


 もっと否定してくるかと思っていたが意外にもあっさりしている。


 そんな話をしている内に自販機の前に着いた。みんなの分と自分たちの分を購入し生徒会室へ向かって歩き出す。買った飲み物は、ほぼ俺が持つことに……小春は自分の1本を持っているだけだ。まぁ良いんだけどさ。とぼとぼと並んで歩く。


「先輩。カノジョとか作る気ないんですか?」

「突然どうした?」

「いや~なんとなく。妹卒業宣言したので、カノジョでも作ろうとしているのかな~って思いまして」

「別に、今は考えてないけどさ。まぁ生徒会もあるし、彼女いても相手が可哀想だし

今は、生徒会の仕事を投げ捨ててまで彼女は欲しいとは思わないな」


 生徒会の仕事は、土日、祝日、長期休みなども度々ある。そんな時デートだの言ってられない。


「へぇ~先輩ってそういうとこは考えてるんですね。意外です。なら、生徒会メンバーならOKってことですか?」


そんなこと考えもしなかった。時間とかの都合は合うことが多いだろう。そういう点では、良いかも知れない。


「いやいや、それは、無いだろ。会長と未琴だぞ。俺なんかとありえないだろ?」

「いや、私と奈瑠もいますよ。年下は対象外ですか?酷いな~私は、先輩好きですよ?」

「何言ってんだ、小春。お前はともかく、奈瑠は妹だぞ。血縁だぞ。なお更無いぞ。あと、お前がそんなニヤけた顔で好きって言われてもときめかないぞ」

「まぁ、そうですよね。これからが楽しみですね。どうなるかは、先輩しだいですし。私は、待ってますよ。先輩が私のこと好きになるのを」

「また、そうやって……」


このときの小春は、少しうつむいていたが、いつものおどけた笑顔とは違った表情に見えた。


「さぁ、先輩。みんなのとこ戻りますよ」

「あっ、待てよ」


小春が走って生徒会室へ向かって行く。俺はそれを追いかけ生徒会室へ向かった。

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