第5話 迎える生徒会

 次の日の放課後


 小春は約束通り、奈瑠を連れ生徒会室にやって来た。会長は、ニコニコして奈瑠を見ている。未琴は、目を丸くして驚いた表情をみせた。


「いらっしゃい、奈瑠ちゃん。私のこと分かるかな?生徒会長だよ~」

「うん、分かるよ。会長のだよね。入学しくでも話してたしお兄ちゃんから聞いてるよ」


 初対面でタメ口ですか妹よ。しかも、会長のこと呼び捨て先輩相手になんて奴だ。


 しかし、会長は全く表情を変える事無く続ける。


「そっか、知っててくれたんだ~よかったよかった。知られてなかったらどうしようかと思ったよ。これからよろしくね、奈瑠ちゃん」


 次に口を開いたのは未琴だった。


「えっと、東城さん?私は、副会長の桜庭未琴よ。よろしくね」

「うん、よろしく。あと、呼ぶ時は、奈瑠でいいから。お兄ちゃんと区別できないし私もって呼ぶから」


 再び先輩相手に容赦ない態度。そういえば、奈瑠の周りの年上って俺くらいだったな。それで、こうなったか。会長と未琴には後で俺から謝っておこう。すると、未琴がすぅーっと俺の横に来て


「東城君、私あなたのこと、名前で呼んだほうがいいのかしら?」


 耳元で囁いてきた。あぁ、気にするのはそっちか……呼び方、奈瑠が加わるから確かに東城って苗字で呼ぶのは区別に困るだろう。でも正直、今更呼び方を変えられるのも変な感じではあるし少し照れくさい部分もあった。


「そこは、未琴に任せるけど」

「そ、そう?なら……明人?」


 未琴が少し照れた表情で俺の名前を呼ぶ。これは、かなり恥ずかしい。


 付き合い始めて名前で呼び合うカップルってこんな感じなのか?こんなにドキッとするとは……しかも、隣にいるのが学園内でも美人と名高い未琴だ。未琴に聞こえてしまっていると心配になるくらいの心音になっている。


「お、おう……どうした?未琴」


 動揺で聞き返すのがやっとだった。


「い、いや……別に呼んでみただけよ」


 未琴はそう言ってプイッと後ろを向いた。


「はぁーい、そこの2人イチャイチャしない」


 ニヤニヤした小春が指を刺し、俺と未琴をからかってくる。


「イチャイチャなんてしてない」


 未琴と息の合ったツッコミを入れてしまった。


「ほらー息ぴったりじゃないですか~」


 やっぱり小春にからかわれる。こんなんじゃ先輩の威厳も何もないと俺は肩を落とすと奈瑠が近づいてきて


「お兄ちゃん、みことが私のお姉ちゃんに相応しいかこれからじっくり見るから、付き合うとかそういうのはもう少し待ってね」


 俺の肩をポンと叩き「彼女選びは私に任せなさい」みたいことを言い出した。


「待て待て、ただ未琴とは奈瑠が入るから呼び方変えようって話してただけだ。付き合うとかそういうのじゃないから!!なぁ未琴!!」

「……オネエチャン、カノジョ、奈瑠、ツキアウ、カレシ、東城君、……」


 あぁ……未琴がショートした。奈瑠の言葉をそのまま受け止めて大きな勘違いを起こしている。もう、いろいろ収集が着かなくなって来た。


「会長、とりあえず、みんな紹介終わりましたよね。仕事始めましょう!!」


 無理にでもこの状況を打破するため、会長に投げた。しかし、会長はまだ楽しみたそうな顔をして


「えぇ~まだ、奈瑠ちゃんの自己紹介終わってないよ~」


 あぁ~とりあえずさっさと終わらして状況を変えなければ


「奈瑠、自己紹介だ!!」

「うん、わかった~もうみんな分かってると思うけど、東城奈留です。以上」


 うぁ~さっさと終われと思ってたけどこれは酷いな。


「えっと、奈瑠ちゃんの得意なこととか趣味とかは?」


 会長が楽しい時間を終わらせまいと質問してくる


「得意なこと?どこでも寝れる。趣味は、寝ること、だらける事」


 妹よ、もう少しまともな回答はなかったのか。


「えーっと……もう少し実用的な特技とか?有ったりしないかな?」


 会長も諦めない。


「あぁ~実用的なのね。あるよ、特技お兄ちゃんをうまく使ってだらける。趣味お兄ちゃんいびり」


 兄の威厳とか消滅したよ。会長も目が点だよ、戦意喪失だよ。


「さぁて、生徒会の仕事しますか」

「そ、そうだね。初めよっか……」


 俺の一声で会長も諦めがついたらしい。とりあえず、普段のように作業を始めることになった。奈瑠と小春はまだ、加入してすぐなので、俺から仕事の内容やら作業方法の説明をする。2人とも理解が早く基本的なことは覚えてくれた。


「2人とも真面目にやれば、ほんとに優等生だな」

「先輩、何言ってるんですか?わたしたちは普段から真面目ですよ」


 心で思っていたことが口に出ていたらしく、小春に突っ込まれる。


「悪い悪い、いつもの感じと違うからさ、新鮮な感じがしてさ」

「そんな風に言われるとなんか、照れくさいじゃないですか」


 普段とは少し違った表情を見れる生徒会。奈瑠も小春もここで少しは良い経験ができるといいな。


 作業は進み、小春と奈瑠は作業の終盤、もうすぐ終わる。俺と会長も別の作業を進め同じくもうすぐ終わる。


「奏さん、こっち終わりました。まだ何かあります?」

「小春ちゃん、奈瑠ちゃんお疲れ様。こっちも、もう終わるから大丈夫だよ」


 これで、今日の作業は終了。最初のバタバタがあったこともあり少し遅くなってしまった。まぁ、いつものように、みんなで駅まで帰るだろう。今日からは奈瑠を加えて……何か忘れているような……生徒会室の隅からなにか聞こえて


「……オネエチャン、カノジョ、奈瑠、ツキアウ、カレシ、東城君、……」


 あぁ未琴まだ壊れてた。


「未琴ずっとあのままだったのか……そろそろ帰るし戻さないとな」


 未琴に近づき揺さぶってみる。


「未琴、戻ってこーい。おーい」

「はっ!!とう……明人!!えっと私は、あっその……ごめんなさーいいいい」


 俺のことを見て顔を真っ赤に慌てて鞄を手に取り生徒会室から飛び出しって行った。


「お兄ちゃん、みことに何したの?あんなに顔赤らめさせて」

「先輩、男なんですから責任とってあげてくださいね」

「いやいや、元をたどせば、奈瑠の言葉でああなったんだろ。小春も責任ってなんだよ。俺何もしてないぞ」


 未琴の逃亡を見て後輩どもは面白がっている。俺のこともからかいながらニヤニヤと、明日、未琴にはちゃんと説明することにしよう。

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