パーツマン ~1000万体目の強運~

いも男爵

第1話 誕生。

 はじめに光が見えた。


 僕の生成が完了したのだ。


 生成カプセルの排水口が開いて、培養液の排水が始まり、水位が半分まで下がると足が床に着き、顔が液体の外に出たので、立ちながら酸素マスクを外して、呼吸を整えながらバイタルデータ検出用のケーブルを後頭部から引き抜いた。


 排水が終了すると、カプセルの入り口が開いたので外に出た。


 周りでは、僕と一緒に生成された顔形が瓜二つの同類達が、カプセルから出てきていた。中にはカプセルに入ったまま動かない者、立つこともできず這っている者もいた。


 僕を含む歩ける同類達は、そうした者達をそのままに生成室を出て検査室に行き、全員が入ると後方のドアが自動で閉じるのに合わせて、天井から放出される洗浄液による洗浄、壁から噴出される熱風による乾燥処置を受けた。


 それが終わると正面入り口にあるスキャナーを使っての精密検査を受け、番号の呼ばれた者はその場に残るように言われ、僕を含むそうでない者達は先へ進んだ。


 次の部屋にはヘルメットとスーツが一体化したパイロットスーツが山積みに置かれていて、自分の分を取り、体に通して中央ジッパーを上げ、ヘルメットを被った後、首の二重ファスナーを閉めていった。


 スーツの着用を済ませ、駆け足で正面通路を通ってハンガーに出ると、僕達が戦う為に用意された二脚タイプの機動兵器が並んでいた。


 前をいく同類から近い順に搭乗していき、僕も一番近い機体の肩を足場にして中に入り、蓋の内側にある凸型の取手を掴んで下げ、両手を使って九十度右に回すことで左右の留め具を出して固定させる。


 真っ暗なコックピット内で、シートに座りながら手前にあるパネル下の赤く点滅している起動スイッチを押すと、機体のメインエンジンが始動し、起動音と共に微かな振動がコックピット全体を揺らす中、照明に明かり付き、正面と左右のモニターがモノクロでノイズ混じりの映像を写し、パネルが武器の残弾数を表示した。


 機体の立ち上げが完了すると、左右のコントロールスティックを握り、フットペダルに足を乗せた。


 基地内なので、ペダルを軽く踏み、二足歩行で前進した。足が床を踏む度に振動がコックピットに伝わってくる。


 正面ゲートが開き、基地の外に出るとペダルを強く踏んで、足底に設置されているローラーを全開にして機体を発進させた。コックピットに揺れは生じたが、歩行に比べれば軽かった。


 同類と一塊になって、砂漠と呼ばれている緩やかな起伏を描く地面をパネルの指示に合わせて進み、途中で転倒する者はそのままに前進を続けていると、前方に黒い塊が見えてきた。僕等が倒すべき敵の集団だ。


 外獣がいじゅうと呼ばれる全身が黒い生き物で、今画面に映っているのは機体よりもやや小さい小型の四足種に分類され、種別名通り四本の足からなる四足走行で向かってきていた。


 敵を視認すると、横一列に並びスティックのトリガーを引いて両腕と一体化しているガトリング砲で一斉射撃を行った。射撃による振動が、コックピット内に歩行とも高速走行とも違った振動をもたらす。


 最前列の外獣が声を上げながら死んでいく中、死骸を土台にジャンプして弾幕を突破してくるものも現れ、僚機に取り付くなり、前足から伸ばした鋭い爪で装甲を剥がして撃破した。


 僚機の損害を前に全機散開して個々に迎撃に当たったが、僚機同士で激突したり誤射したりした。


 僕も僚機を二、三機誤射しながら戦闘を続けている中、左から飛び掛かってきた外獣を左砲身で殴るも、致命傷は与えられなかったようで、体当たりを受けて、横倒しにされてしまった。


 外獣が爪と牙で機体に損傷を与えている中、もう一度殴ろうとしたが、攻撃が関節にまで及んでいたらしく、まったく動かなかった。そこでローラーを回転させた左足を腹部に押し付け蹴り飛ばした。


 腹部を抉られて苦しんでいる外獣を倒すべく左ガトリングを撃とうとトリガーを引くと暴発した。さっきの攻撃で砲身も損傷していたのだろう。


 仕方なく左スティックの赤いボタンを押し、左脚部に付いている火炎放射器による炎で焼き殺した後、左スティックの後ろにあるレバーを引いて、不要な左腕とガトリングと背中の左弾倉パックを切り離し、右武装のみで戦闘を続行した。


 右ガトリングの弾が尽きると右腕も切り離して、両足の火炎放射器で戦闘を続行しようとしたが、左脚部の火炎放射器は燃料が切れ、右脚部は燃料漏れを起こしていたのか、暴発して右足を燃やしてしまった。


 機体が使えない判断した僕は、手近に見える動かない僚機の中から使えそうなものに目を付けると、取っ手を回し留め具を外して蓋を開け、機体の外へ出て、銃弾が飛び交い僚機と外獣が入り乱れる中を走っている途中、一匹の外獣に見つかって追いかけられた。


 全力で走って僚機に辿り着き、外側の取っ手を回して蓋を開けて中に入り、シートに座ったまま動かない同類を掴んで外獣に向かって放り投げ、首に噛み付いて振り回している間に蓋を閉めてシートに座って機体を立て直し、目の前の外獣を撃ち殺した。


 戦闘が終わると辺りは静かになっていて、周囲には黒い煙を上げる僚機の残骸と、全滅させた外獣の死骸が散乱していた。


 パネルに帰還命令の指示が表示されたので、動かない不要な両腕を切り離し、残っている僚機と共に基地に戻った。


 ゲートを通って、基地に入ったところで、シートの下から小さな爆発音と共に大きな振動が起こり、コックピットに煙が入ってきた。乗っていた機体のメインエンジンが軽い爆発を起こしたのだのだろう。基地に着いたところで限界を迎えたに違いない。


 蓋を開けて、外に出ると機体をその場に残して、ハンガーに収められた僚機をよじ登って、通路に入る中、一機の僚機が爆発炎上したが、天井から出てきた消火装置によって、即座に鎮火させられた。


 入った時とは反対の通路を通ると、中には袋に入った栄養食と栄養ドリンクが山積みに置かれていて、その内の一つを取り、空いている場所に座ると、ヘルメットを外して摂取した。


 摂取が済むと横になって目を閉じた。戦いが無い間はこうしている以外にすることがなかったからだ。

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