さようなら、お父さん

 じんわりと、深く染み入るような温もりに満ちた物語でした。
 そう遠くない未来に、魂の複製が可能になり、死と魂の概念は変わってしまうでしょう。作中で提示されるような人格のメモリーか、それとも今研究が進められている、ソーシャルネットワークや日記、他者の記憶といった記録から積み上げる復元人格か。
 しかしそれらの技術は、人の心の在り方まで変えてしまうわけじゃない。絶対に正しい倫理や道徳なんて存在しないまま、技術だけがどんどん前に進んでしまう。
 大事なのは、自分の心で受け止め、そして、何が大切かを選ぶこと。作中で、父がそうしたように。

 遠ざかっていく父の背中は、少女の心に何を残しただろうか。少女はどちらを選ぶだろうか。
 それはきっと、私たちにとっても、大事な答えなんです。

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