カオス

紫ぐれ 麻衣

カオス

男の数え方は一本。二本。。。少なくともここにいる男たちを一人。二人。。という数え方には出来ない。。私は男を使い捨てにする為に此処へ来ているのだから。


歌舞伎町は都会??いや、その数年後には六本木辺りにとってかわられる街。。どちらかというと芋くさい繁華街だった。

そんな街にもディスコの聖地のような時代があった。

大体、男子なんて左手にヌード写真、右手は大忙しで頭の中はエロイ妄想でぐるぐるキャンディー。そんな高校時代を何処かの和香な田舎町で過ごし、就職や進学で東京に出てきて、愈々男子から男になりたての妄想炸裂状態のロケット花火がこのカオスの街にはうじゃうじゃ居た。

この頃高校生だった私は、時々このロケット花火をお借りする為だけにやってくるのだ。


出会いなんていう綺麗なものでもない。ビビッとくるトキメキでもない。

そもそも愛情ある交わりなんて未経験。高校生なんだし、交わってること自体が異常事態。そんな時代だった。

恋をする交わりも、愛あるものも、例えばレイプされるも、そもそもやっていることは大して変わらない。それはこの時そう思っていたのではない。そんな考えが入る余地など無かったのだから。。でも、私は今だからこそあの頃を振り返って思う。。やっていることは大して変わらない。。

そもそもどうして女はあんな屈辱的体制でしなきゃいけないのか。。。


屈辱。。そんな毎日だった。。だから、私はこの街で自分の体を浄化したかった。

強固なシミがついたものをいくら洗ってもシミ跡は消えない。けれど、上から汚い、濃い色を塗りたくればシミがあった事もシミ跡さえも消える。

しかし、又シミが付くから消さねばならない。。そうこうするうちに

濃い色が薄まってくると古いシミ跡が見え隠れする。だったらもっと濃い色を塗りたくればいい。。当時の私にとってロケット花火は必須になっていった。一本。。また一本。。と。。。


私にも選ぶ権利はある。。男同士でやってきているか?一人でやってくるやつ。。恋愛なんかに発展させたくない。だからどう見ても好みでないタイプが一番良い。アイコンタクトは重要だ。盛り上がる曲が流れる。DJのMCもどんどんエキセントリックになる。ミラーボールがぐるぐる回る。ビーム光線がチカチカ激しくなる頃、私は狙ったロケット花火の傍で踊っている。

狙った獲物は逃さない。。アイコンタクトを送る。。概ね百発百中。

ロケット花火は私と正面に向かい合うように踊りだす。そこでスローな曲になる。。密着した体から獲物はすでにもう爆発寸前だとわかる。。

「出ようか」「うん。。」

あとはお持ち帰りされるだけだ。


早朝になると私は必ず目が覚める特技があった。

もう帰らなきゃと言う。そこで高校生だとバラす。

驚く相手。。連絡先を聞かれ、又会いたいと言われる。

リカちゃん電話の番号を教える。

使用済みのロケット花火にはもう用は無いのだから。。。


私はすがすがしい朝の駅のコインロッカーに向かい、トイレで制服に着替える。

当時、終電間際に補導員は居ても、朝は居ない。着替えた私は私服をコインロッカーに入れて何食わぬ顔で登校する。

自分の体が綺麗になったような気がした。

それでもあの男が地方の仕事から帰ってくれば、私の体は又、汚される。


あの男。。。私の父親だ。。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る