36 誕生日・つぶやき・長靴

【誕生日】


 食卓にケーキが置いてあります。

「メイド、誕生日おめでとう」

 今日はメイドさんのお誕生日ですか。

 いちごのショートケーキ、美味しそうです。


「五月様、ありがとうございますです」

「はい、プレゼントだ」

「わ〜い。何でございましょう?」


 ガサガサ、ガサガサ……。

「チョ、チョコレート……」

「好きだろ?」

「は、はい……」

 マニキュアを諦め、コスプレ通販を諦め、最終的にチョコレートでした。


「禁チョコしてるのに……」

 メイドさん、心の声です。




【つぶやき】


「ん〜〜〜」

 メイドさん、お部屋で鏡とにらめっこしています。

 口をすぼめて、右のほっぺたを膨らませています。


「ん〜〜〜」

 今度は、鏡に向かっておでこを突き出しています。

 何かつぶやいていますね。


「禁チョコしてるとはいえ、五月様からいただいたのですから……」

 昨夜、誕生日プレゼントにいただいたのですよね。

「食べないわけにはいきませんでした」

 ふむふむ。

「一個ってわけにもいかなくて……でも、やっぱり食べなきゃよかったです」

 ケーキの後に、ふた欠け食べたのでしたよね。


「でっかいニキビできた」

 あちゃー。




【長靴】


 メイドさん、長靴を買いにきました。

 今まで履いていたのは古くなって、指先から雨が漏れてしまいます。

 梅雨と、夏の豪雨対策のためです。

 いくつか、店員さんが選んでくれました。


「メイドさん、おしゃれなのがあるよ。ほら、水玉模様」

「素敵な柄ですが、これはちょっと大きいです……」

「こっちのピンクはどう?」

「これも大きいです……」

 なかなか合うのがないようです。


「じゃあ、これ……」

「えぇ」

「よし、ピッタリだ」


 店員さんが最後に出してきてくれたのは、子供用の黄色い長靴でした。

「今日はやめておきます……」

 メイドさん、しょぼしょぼと帰ります。

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