33 植木・昭和っぽい②・薬局

【植木】


 メイドさん、お庭にたたずんでいます。

「メイド、何してる?」

 五月先生が家の中から声をかけました。

「植木が枯れてしまいました……」


「それは親父が大事だいじにしてた木だ」

「父様、天国で怒ってらっしゃるでしょうか」

「気にするな。木の寿命だ」

「なら父様、天国でお手入れしてらっしゃるでしょうか」

「そうだな」


 ふたりの様子を、五月先生の父上が空の上から見ています。

『今日父の日なんだけどなー』

 ちょっとしょげ気味につぶやきます。


『気がかない娘で面目めんぼくない』

 メイドさんの父上もご一緒です。




【昭和っぽい②】


 午後三時です。

 今日のおやつは栗まんじゅうのようです。

 五月先生、ひと口頬張ほおばって、熱いお茶をすすっています。

 ズズズ……。


 メイドさんは猫舌なので、冷めるまでふーふーしています。

 「五月様ご存知ですか?」


 ズズズ……。

「何を?」

「金物屋さん、今でもそろばん使っているんだそうですよ」

「そうらしいな」

 ズズズ……。

「ご存知でしたか」


「あそこの親父さんは昔ながらの人で、電卓なんざ使えねぇって言ってたな」

風情ふぜいがあって、わたくしあのお店好きです」

「思いっきり昭和っぽいぞ?」

「そこが良いのです」

 おふたりも思いっきり昭和っぽいです。




【薬局】


 五月先生とメイドさん、ドラッグストアでお買い物です。

 今日は、月に一度の安売り日。


咄嗟とっさのために風邪薬買っとこ。絆創膏ばんそうこうと、あと綿棒も」

「五月様、薬局屋さんなのに、いろんなものがございますね」

「あぁ。あ、歯磨き粉も」

 カゴいっぱいに商品を入れ、レジへ向かいます。


「ラーメン、お菓子、お茶……」

 店員さんが一つ一つ、確認しながらバーコードを読み取ります。

「これ、メイドが入れたのか?」

「あい」


 食料品がいっぱいです。

「ここはスーパーかっ!」 

「だって安いんだもん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る