五月(ごがつ)とメイド

五月乃月

卯月

01 自己紹介・階段・ふとん①

【自己紹介】


 五月先生とメイドさん、どんな日常なのでしょう。

 中を覗いてみましょうか。


 おや、玄関にお多福人形が置いてあります。

「お初にお目にかかります」

 人形がしゃべりました!

「わたくし全く売れない作家、五月乃月にお仕えするメイドでございます」

 お多福人形ではなく、メイドさんでした。


「おーい」

 五月先生が書斎から、メイドさんを呼んでいます。

「おーい、メイドぉー。おらんのかー?」

「あーい、ただいまー」

 メイドさん、早く行かないと。


「わたくしどものたわい無い会話をひと月半、お楽しみいただけましたら嬉しゅうございます」

 これから始まるおふたりの日常に、皆様もほのぼのしちゃってください。




【階段】


 五月家の二階には、四畳半と六畳の部屋があります。

 どちらもほぼ物置と化していて、五月先生もメイドさんも滅多に上がりません。

 たまに雨戸とサッシを開けて風を通したり、ベランダに布団を干すくらいです。


 ガンッ!

 大きな音がしました。

「五月様ぁ、どうされましたかぁ〜?」

「階段で小指打った」

 探し物をしに珍しく、五月先生が二階に上がったようです。


「イタイイタイでございますね。お薬つけて包帯マキマキいたしましょう」

 マキマキ、マキマキ……。

 メイドさん、明るく元気な性格です。

 マキマキ、マキマキ……。


「メイド? これじゃまるでギプス……」

「いっ!」

 けれどお調子者で、やり過ぎるのが玉に瑕です。




【ふとん①】


 うららかな春の朝です。

 五月先生、お茶をすすりながら新聞を読んでいます。

 メイドさんが提案します。

「五月様、今日は天気が良いので冬布団も干しましょう」

「よし、私も手伝おう。ヨイショっと」


「冬掛けと毛布は押入れの中でございますね」

「ん」

 五月先生、掛け布団を持ち上げます。

 その下の毛布を、メイドさんが担当します。

 メイドさん、目一杯両手を広げてつかみ、持ち上げたその時です。


 コロコロコロ……。

 布団から何か出てきました。

「焼き芋でございます!」

「・・・」

 五月先生、固まります。


「いつの?」

「・・・」

 五月先生、無言です。

「干涸びてるし」

 五月先生、そーっと二階に上がって行きました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る