第22話 一兵卒のエッセイ

 ただいま、病院の待合室でスマホをぽちぽち。祖母の付き添いです。

 私の唯一の趣味、なろうの読書&執筆タイムは主にこの付き添い時間と子供が寝てからの深夜になっております。至福のひととき。


 さて、今回のタイトルはなんぞや、ですが。

 ふと今朝、目覚めて。

 なぜか分かりませんけれども、私、突然三年前のことを思い出したのですよね。



 三年前、倉庫を整理していた父が、一冊の小ノートを見つけたのです。

 なんと、曽祖父のもの。

 曽祖父は私が生まれた時には既に鬼籍の人でして、写真でしか会ったことがありませんが。

 明治生まれの「坂の上の雲」の時代の人ですね。


 そのノートに記載されていたのがですね、曽祖父が二十歳のときのシベリア出兵日記、だったのです。


 ワクワクしましたね〜。

 九十五年前のウラジヴォストォクでの一兵卒のエッセイ!

 ロシアの帝政が終わったばかり! ですからね。


 早速、ページを開くなり、のめり込んで読む私。

 曽祖父はかなり筆まめな人だったようです。

 昔の人って、いやいや、みんなすごく達筆ですよねえ。

 おそらく、膝の上かどこかで書いたと思うのですけれども。惚れ惚れするほどの万年筆の筆致。流れるようです。自分の字が恥ずかしい。



 内容はシベリアでの作業(土木工事がメインですが詳細はわからない)、厳しい自然(零下どれくらいなんでしょう?)、ロシアの文化(主に建築、ペチカやログハウスについて)、民俗……等々、について。

 色々と書かれています。


 このときに読んだ、春先に凍った川が瓦解するときの描写を、私はパクって作品にそのまま使用させていただきましたが。(カミングアウト……SKY WORLDのロシアをモデルにしたゼルダという国の冬の情景)


 面白い。興味が尽きません。


 特に面白いのは、やはりロシア人と日本人の違いについて言及するところ。


 そのころの軍での上官と一兵卒の関係は、ロシアと日本では全く違いました。

 例えば、馬車(!)に上官、部下が乗り合うのは日本では普通の光景であったのですが、ロシアでは絶対にあり得ないことなのだそうで、びっくりする曽祖父。その頃のロシアでは階級分けの意識が徹底してるのですかね。


 そして、花も恥じらうロシア人女学生については。

 驚くべきことにほぼ全員が花柳病を患っているのだそうだ、と記載。

 兵士に春を売るのが横行しているのだ、と書かれていましたが。真偽のほどは分かりません。

(シベリア出兵は、死傷した兵士より、性病に感染した兵士の方が多かったと有名ですね)


 他にも。

 ロシア人は休日にはすべての店を閉めて、家族でのんびりと陽の光を浴びて公園を歩いて過ごすのが習慣なのだ、とか。

 また、富も貧しきも関係なく、家の窓辺には必ず花が植わっていて、とても美しい、とか。

 素晴らしい、と称賛する曽祖父。



 いきいきとそれらのことが描かれていています。

 辛い毎日だったと思うのですが、花を美しいと感じるのはそんな時でも変わらないのだなあ、と思う私。



 私の父にこのことを話すと、


「(お祖父さんは)いつも、思い出すたびにめちゃくちゃ怒ってたわ。ようけ(兵隊が)死んだわりには、何のためにあんなところ行ったんか、ホンマ、なにしたんかわからんかった」


 との思い出話を。


 約九億もの戦費をつぎ込み、三千三百人以上もの死者を出したシベリア出兵です。


 加藤高明氏曰く、


「なに一つ国家に利益をももたらすことのなかった外交上まれにみる失政の歴史である」


 と。




 さて、三年前のことを突然思い出した私は、同じように突然、思いつきました。


 この曽祖父の日記を元にした、回想録のような掌編(歴史モノ? ノンフィクションになるのかしら)または脚色を加えた二次創作? のエッセイを書いてみようかしら、と。


 というわけで、来年度は超真面目な日本男児のお話を書いてみることにします。



 勉強しないといけませんね。


 でも、とりあえずは。

 まず、日記を探すところから始めないといけませんね(笑)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る