ナルシスト

僕のクラスにはこんなやつが居た。

「なあ、僕ってかっこいいと思わないかい。」

これが、彼の口癖だ。聞くたびにクラスの皆は同意と言う名の退散をする。面倒くさい奴だ。ある日、決して裕福といえない(というか貧乏)な金無屍かねなししかばねが転校してきた時のこと。

「おー。屍君か。よろしくな。俺は、金在楽きんざいらく。せっかくだから、自己紹介するよ。」

屍君はただただ立ち止まってきょとんとしている。

「家は、金在デパート創業者の、金在勇。天下一の金持ちだ。それに、この学校のテストでは常に一番。サッカー部のエース。」どうだ、とでも言うように決めポーズをしている。その間も屍君は無言。続いて、屍君の自己紹介が始まろうとしていた。が、屍君は倒れてしまった。この状況に、他の皆は自慢に呆れ貧血でも起こしたかと思ったが、朝食が蟻三匹によるものだと後から判明した。

___卒業を迎えようとしている二月。屍君はこうなった。髪を掻きあげ、

「家は、町一番のホームレス。天下一の貧乏さ。それに、この学校のテストでは常に三百四十五番。漫画部の端っこの席。」皆は少しだけほっとした。

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