第35話

試合後、猛烈な睡魔に襲われてお昼ごろまで爆睡していた千秋達。

そんな千秋達は午後二時現在、全員で本土横須賀にある模型販売店にやってきていた。

なぜこんなところにやってきているかというとある事実が発覚したからである。

彼女達の大半が艦船模型を作ったことが無かったのだ。

普通に考えれば世間一般において艦船模型を作ったことがある女の子なんてほとんどいないのだろうが、この部活においては話が違う。


「伝統と栄光の帝山高校戦艦部員が艦船模型を作ったことが無いなんて言語道断です!!今から買いに行きましょう!!丁度私も展示用の大和を作るところでしたし!!」


千秋のこの一言で買いに行くことになったのだ。

費用は部費で落ちることになっている。

部員たちは初めて作る艦船模型を現在選定していた。


「千秋ちゃん、これどうかな?」


「有希ちゃんは長門ですか……乗艦を作るんですね?」


「最初だからね。思い入れのある艦にしようと思って。メーカーとかはどこがいいの?」


「メーカーは個人的にはアカシマをおすすめしますがそこまで気にしなくてもいいかと。初めてですし、フジにでも手を出さない限りは。それとあそこのお城やゆるキャラのプラモデルに手を出そうとしている人たちを止めておいてくれないでしょうか?あれは経費では落ちません」


「あれは直と綾音じゃない……ごめん、止めてくるね」


「お願します。……あれは美守ちゃん?……持ってるのはこんごうとむらさめ?両方買うつもりなのかな?……船だからいいか」


今回の目的はあくまで艦船模型を作る事であってお城やゆるキャラを作るわけでは断じてない。

しかし、千秋にも買わなければならない物はたくさんあるので全員を注意しているわけにはいかなかった。

千秋は修子と共同でフルスクラッチ模型を作るのでプラモデルそのものは買わずに木材、真鍮板、プラ板などを購入していた。

手すり等を作るために真鍮線や銅線も買っているし、薄い板の部分は新聞紙や厚紙なども使う。

資料に関してはすぐそこに実物があるので困ることはないし、各種図面もすでに揃っている。

道具や塗料などは実家から送って貰った物を使う予定だ。

修子は長門ごと道具も何もかもすべて海中に没したので一気に全部買い替えると千秋に嬉々として話していた。

部費で落とせることがとてもうれしかったようだ。

道具には当然、一個数千円以上するものがざらにあるので全部揃えようとするとそれなりの金額になるため近いにもその気持ちはよくわかった。


「家に塗料どれぐらいあったっけ……買い足しておこうなかな。瞬間接着剤やはんだも足りないかもしれないし。この際だからいっぱい買っておこう」


千秋から渡された領収証を見て吉乃先生が固まるのはこのもう少し後のことである。

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