第10話 結斗と陸斗


姫島くんにデートに誘われてしまいました。


「綾斗、陸斗とデートしたんだ。俺にも権限はあるだろ?」


「う、うん!」


姫島くんも私のネームに協力したいって思ってくれてるんだ。


「いいなぁ!お兄ちゃん!琴莉も行きたい!」


「琴莉はだーめ。兄ちゃんとお姉ちゃん2人で行かなきゃデートじゃないの」


「ぶーっ!」


「結斗・・・」


「何怖い顔してんだよ?陸斗。お前に邪魔する権利ないだろ?」


「それは・・・」


「悪いけど、俺は陸斗に遠慮しないからな」


「遠慮?」


「まだ自覚無しか。自分の気持ち、気付いた時にはもう遅いかもしれねぇからな?」


「結斗・・・?」


「じゃあ、桜木。デートは決まりな」


「あ、うん」


姫島くんとデート・・・か。


姫島くんの家を出ると、高宮くんが私を家まで送ると言ってくれた。


高宮くんと二人っきり!


「桜木、あいつとデートするんだな」


「う、うん。優しいね、姫島くん。私の漫画の為にデートしてくれるなんて」


「俺とのデートだけじゃ勉強にならなかった?桜木・・・」


「えっ?た、高宮くん違うよ!姫島くんの気遣いを無駄にするのは良くないと思ったから」


「そうか」


「高宮くん?」


「胸がズキズキする」


「だ、大丈夫!?」


「さっきまで俺、元気だったのに・・・」


高宮くんはしゅんとした表情で言った。


高宮くん・・・?


「やっぱり無理して送らなくて大丈夫だよ?姫島くんちからなら高宮くんちのが近いんでしょ?早く帰って休んだほうが・・・」


「早く帰りたくない」


「えっ?」


「桜木とおしゃべりしたい。楽しいから」


っ!?


「む、無理しないでね?」


「ん」


高宮くんはいつも不意打ちでドキッとさせてくる。


「高宮くんって琴莉ちゃんと本当に仲が良いんだね」


「ああ。赤ちゃんの時から知ってるからな」


「そうだよね。姫島くんとは小学校の時からの付き合いだっけ」


「ああ。結斗は一年生の時からずっと同じクラス」


「ずっと一緒なんだ?」


「ん。登下校も一緒だし、放課後遊ぶのは大抵結斗だった。親より一緒にいる時間が長い」


「そんなに!?」


「俺、あんま喋らないから結斗といると楽。俺が喋らなくても結斗は考えてる事分かるし」


「すごいね。兄弟みたい」


「ああ」


なんか羨ましいかも。


「じゃあね、高宮くん」


「ああ。またな、桜木」


「おやすみなさい!」


家の前に着くと、私は高宮くんと別れた。


今日はすごく幸せな日だったなぁ。



「みっちゃん、おはよう!」


「あ、綾ちゃん!おはよう!」


「見て見てぇ!この猫耳!あたしが作ったの!可愛くない?」


翌日、綾ちゃんが私に猫耳カチューシャを見せてきた。


「すごいね!市販のみたい!」


「ふふっ。ありがとう!早くユイユイ来ないかなぁ!」


姫島くん??


「おはよう、桜木。綾斗」


「よぉ」


「来たぁ!!」


姫島くんと高宮くんが登校してくると、綾ちゃんのテンションが上がる。


そして


「ユイユイにプレゼントー!」


綾ちゃんは姫島くんの頭に猫耳カチューシャをつけた。


「な、何をした!?綾斗!」


「やっぱりツンデレといえば、猫耳よねぇ。ユイユイ可愛い!ぷぷっ」


「ね、猫耳!?綾斗、てめぇ!!」


わ・・・


「姫島くん、可愛いね。猫耳カチューシャ姿」


「えっ?さ、桜木?」


に、似合う!


「私は良いと思うよ」


「だ、だろ!?可愛いか?俺」


「うん!」


「単純バカね、ユイユイ」


「うっせぇ、綾斗!」


「綾斗・・・」


「ん?なぁに?陸斗」


「俺にもカチューシャ無いのか?」


「あら、陸斗がそういうのつけたがるなんて珍しいわね」


「俺も可愛くなりたい」


「なんだよ、陸斗。めちゃくちゃ悔しそうな顔しやがって」


「え?」


「俺が桜木に褒められたから羨ましくなったとか?」


「結斗、ムカつく」


「あぁ?なんだよ」


「綾斗、カチューシャ」


「ごめんね。陸斗。ユイユイのしか作ってないのよ」


「む・・・」


「何不機嫌になってんだよ?陸斗」


「なんか昨日から結斗にムカムカする」


「何だと?」


なんか、高宮くんと姫島くんの空気が不穏?


「高宮陸斗!今日はパケモンで勝負だ!俺のほのおタイプパケモンハンパなく強いぞ!」


桜小路くんが空気を読まずに教室に入ってきた。


桜小路くん!!


「何だ?姫島結斗!!そのカチューシャ!無様だな!ははは!」


「うっせぇなぁ、カエルは黙ってろよ」


姫島くんはからかってきた桜小路くんに冷たく言い放つ。


「カエル!?」


あ、桜小路くんへこんじゃった。


「俺はなんて可哀想なプリンスなんだ・・・」


「そうだ、桜木。デートの件、相談させろ。一応俺は俺でプラン考えてきたんだよ」


「へ?」


「アキバ以上に楽しいところに連れて行ってやる」


「ひ、姫島くん!」


「結斗、嫌な奴!!」


「なんだよ?陸斗。何キレてんだよ?」


なんかますます不穏な空気に!?


「桜小路くん、パケモンやろ?昨日LINEくれたから俺も持ってきた」


「高宮陸斗!ああ!」


高宮くんが声をかけると、桜小路くんは復活した。


高宮くんと姫島くん、どうしたんだろ?



「バカな子達。争ってる間に僕が奪っちゃうよ?」


「綾ちゃん?何か言った?」


「ううん!何でもないわ」


??


「わっ!みっちゃんのお弁当美味しそう!みっちゃんの手作り?」


「うん!」


「良いわねー!」


今日は優里香ちゃんが部活の集まりの為、私は創作研究部の皆とお昼ご飯を食べる事に。


「桜木。俺に何かくれよ?」


「あ、うん。良いよ、姫島くん。唐揚げが良いかな?」


「おぅ。」


「じゃあ、姫島くんの弁当箱に・・・」


「食わしてくれねぇの?」


っ!?


「えぇっ!」


「ほら、あーん」


「あ、あーん?」


私は姫島くんに唐揚げを食べさせようとする。


すると


高宮くんが唐揚げを食べてしまった。


「陸斗、てっめぇ!」


「んまい。桜木の作った唐揚げ」


た、高宮くん!?


「あらあら。陸斗、今日は攻めるのね?」


「どういうつもりだ?陸斗!」


「俺も唐揚げ食いたかったから」


「だからってよ!」


「ひ、姫島くん!もう1個あげるから!ね?」


「ちっ・・・」


やっぱり今日ギスギスしている気がするなぁ、高宮くんと姫島くん。


何でだろう?


「出来た!こんな感じだな」


「あたしも!素晴らしいBLが描けたわぁ」


「俺もたくさん4コマ描けた」


「私もペン入れまで済んだよ!」


部活に行くと、皆ようやく部誌に上げる原稿を完成させられた。


私が描いたのは高宮くんをモデルにした男子に片思いをする女の子の話。


「この部誌は学祭で配布しましょうか」


「大分先だな」


「夏は他の作業に集中したいからね。先に終わらせたのよ。コミケに出す商品の準備がある!」


「あ、そっか。ドラマCDだっけ?」


高宮くんが声優を務める。


「そう!皆でシナリオを考えて、それを音声化!」


「綾斗、金はどうすんだよ?音声収録するならスタジオ借りたり・・・」


「大丈夫!あたしに任せなさい!」


「本格的に商売の世界に踏み込むんだね」


「そ。陸斗はえっろいのとR15くらいなのどっちが良い?」


「あ、綾ちゃん!?」


「よくあるじゃない。ピロートークのドラマCDとか。そういうのか、少女漫画みたいな感じのキス止まりの話か」


「どっちも順応できる。俺は演者だ」


「まあ!頼もしいわね」


「え、エロいのはちょっと!」


「大丈夫よ。ユイユイなんかエロゲーマーだから!ユイユイがシナリオ書けるわよ」


「変な称号つけんな!そ、そんなゲームやってねぇよ」


「なーにかっこつけてんのよ、ユイユイ」


「み、皆はAVとか見るから平気かもしれないけど、私には手厳しいかな。あはは・・・」


「桜木が辛いならやめる」


「そうね。みっちゃんにはリスキーかしら」


「だな」


「とりあえず、これからはドラマCDのシナリオ制作に入るわよ」


「頑張る、俺」


「やってやろうじゃねぇか」


「頑張ろうね!」


コミケかぁ。


ついに皆で大きな作品を作るんだなぁ。


日曜日になると、私は姫島くんとデートへ。


今日は白にチェック地のワンピースにピンクのカーディガンを羽織り、デニムのサンダルを履いた。


姫島くんと2人になるのって珍しいよね?


「桜木!」


駅で姫島くんを待っていると、姫島くんが走って来た。


「待たせたか?」


「だ、大丈夫!」


わっ。


姫島くんはUネックの白いTシャツにジーンズを合わせ、靴は黒いバレエシューズを履き、ネックレスをしていて、頭には黒いつば広の帽子を被っている。


おしゃれだなぁ!



「桜木、可愛いじゃねぇか」


「あ、ありがとう!姫島くんもかっこいいね」


「あ、当たり前だろ!さ、行くぞ」


ん?


何か視線を感じたような?


「映画館?」


「おうよ。今話題の恋愛映画観ようぜ」


「あ、私ちょうど観たかったんだ!」


「良かった」


姫島くんが私を連れてきてくれたのは映画館。


映画なんて久しぶり!!


「桜木、何か要るか?」


「じゃ、じゃあオレンジジュース」


「買ってくるわ」


「あっ!お金払うよ!姫島くん!」


「良いよ。俺が払うし」


「で、でも!」


「デートなんだからよ。男に奢らせろ」


「あ、ありがとう」


デートって言われると、ドキッとしちゃうなぁ。


「わっ!結構近い」


「先にチケット予約しておいたからな。観やすい席のが良いだろ?」


姫島くんって結構しっかりしてるなぁ。


さすがお兄ちゃん。


「姫島くんって頼りになるね。デート慣れしてる感じが」


「は?デートは初めてだけど?」


「えっ?」


「さ、桜木が初めてだし。俺がデートしたいって思えたの」


ひ、姫島くん!?


「そ、そっか」


姫島くんが選んだ映画は彼氏いない歴27年の女性がある日突然モテ始めるという映画だった。


ヒーローは2人。


幼馴染みの優しい男子と俺様な同僚との間で揺れ動く話だった。


わあ、三角関係って良いなぁ。


すごくキュンキュンする!


なんだか高宮くんと姫島くんみたいだな、ヒーロー2人。


だけど


ん?


ひ、姫島くん!?


姫島くんはいきなり私の手の上に自分の手を重ねた。


高宮くんみたいにリアルなデートを再現してくれてるのかな!?


それとも?


どうしよう!


ドキドキして映画に集中できないよーっ!


「面白かったな。まさか幼馴染みとくっつくとは。俺、俺様な同僚とくっつくと思ってたわ」


「そ、そうだね」


なんだかまだドキドキしている。


やっぱりまだ男子慣れしてないんだなぁ、私。


「昼飯行くか、昼飯」


「うん!」


「近くに美味いパスタ屋があるからそこで良いか?」


「う、うん!」


私達は映画を観終えると、パスタ屋へ向かった。


「美味しい!この和風パスタ」


「良かった。桜木が気に入ってくれて」


「姫島くん、行きつけなの?」


「ああ。琴莉が好きでさ。よく一緒に行く」


パスタ屋に着くと、私達は昼食をとる。


「姫島くん、本当に妹思いなんだね」


「あ、あいつが兄離れできてないだけだよ!」


「そういえば、こないだ琴莉ちゃんと高宮くんとリリアのダンス踊ったよ!琴莉ちゃん、高宮くんよりお兄ちゃんのが上手いって言ってたよ」


「ああ。琴莉と毎日一緒に踊ってるからな」


「ま、毎日!?」


「引くよな、キモイよな!?」


「そんな事ないよ!すごく嬉しいと思うよ?琴莉ちゃん」


「うちは母さんが仕事で家を空けがちだからな。俺が遊んでやらねぇと」


「そっか」


「今日もすげぇ行きたがってた。お姉ちゃんと遊びたいって」


「あはは。呼んでも良かったんだよ?」


「俺が嫌だったから。さ、桜木と2人で出掛けてみたかったし」


っ・・・


「ひ、姫島くんは優しいね。高宮くんみたいに私の漫画の事、考えてくれてるんだ」


「ちげぇよ、バーカ」


「へ?」


「俺が桜木と遊びたかったの。悪いか?」


「う、ううん。最初、姫島くんに嫌われてると思ってたから嬉しいな」


そこまで姫島くんと仲良くなれたんだ、私。


「俺だって焦るわ。陸斗も綾斗も意外と攻めるしよ」


「攻める?」


「俺は桜木とはもう友達だ。最初はいつもみたいに陸斗に近付くチャラいクソ女かと思ってたが」


「そ、そうだったんだ」


「今はちげぇよ。桜木は特別」


え・・・


「姫島くん・・・」


「なんかほっとけねぇ」


「あはは。私、しっかりしてないからね。妹みたいなのかな?私、姫島くんってお兄ちゃんらしいなぁってよく思うの」


「お兄ちゃん?」


「うん!こないだだって私が夕飯適当に済ませようとしたから怒ったじゃない」


「言っとくけど、俺は桜木を妹みたいだと思ってねぇぞ」


「えっ?」


「俺の事も見やがれ。俺は男として桜木に接しているつもりだから」


「姫島くん・・・?」


「お兄ちゃんだなんて言わせねぇよ」


姫島くんは私の頬をつねり、言った。


「い、痛いよー!」


「あはは。変な顔だな、桜木」


最近、姫島くんは私といる時も笑ってくれる。


その事がなんだか嬉しい。


お昼ご飯を食べると、私達はショッピングモールへ。


「新しいサングラス欲しいんだよな」


「サングラスってたくさん種類あるんだね」


「ああ。結構持ってる。これなんか良いかもな」


姫島くんはサングラスをかける。


「わっ!ワイルド感出たね!Jなんとかにいそう!」


「桜木はこっち」


姫島くんは私にサングラスをかける。


「うーん。何かちげぇな。やっぱ桜木は眼鏡だな」


「あはは。こないだまで眼鏡してたからね」


「ま、眼鏡無い方が可愛いけどよ」


「えっ?」


「わっ!お、俺ストレートに言い過ぎだ!」


「姫島くん?」


「とりあえずサングラス買ってくるわ」


「あ、うん!」


姫島くん、何か動揺してた?


「桜木、このワンピースなんかどうだ?」


「姫島くん、丈が短くない!?」


「そうか?これぐらい攻めても良いと思うぜ?」


姫島くんが手に取ったのは肩が出た丈の短いストライプのワンピース。


姫島くんの買い物が終わると、今度は私の買い物に姫島くんが付き合ってくれている。


「姫島くん、こういうの好きなの?」


「ああ。生脚が見れるからな!」


「へ?」


「うわっ!今の無し!忘れろ!べ、別に桜木の生脚見て悶える趣味は!」


「ぷぷっ。結斗バカだ」


「ドスケベね」


ん?何か今聞こえたような??


「で、でも!こういうの私が着たら引かれちゃわないかなぁ」


高宮くん、どう思うかな。


「引かねぇよ。桜木のそういう格好見てみたい」


「は、恥ずかしいから無理だよぉ!姫島くん」


「じゃあ、これなんかどうだ?桜木!」


「キャミソールにショーパン!?殆ど下着みたいだよ!?」


「桜木は恥ずかしがり屋だな」


「わ、私セクシー系統じゃないし!」


「ほら、試しに着てみろ!桜木」


「ひ、姫島くん!」


強引だ!


姫島くんに言われ、私はとりあえず肩出しのストライプの丈が短いワンピースを試着する。


ちょっとした風が吹いたらパンツ見えちゃいそう!


「桜木、着れたかー?」


「う、うん!」


試着すると、私はドアを開ける。


「ど、どうかな?」


めちゃくちゃ恥ずかしいよ!!


「うん。悪くない。すげぇ・・・可愛いな」


姫島くんは顔を真っ赤にして言った。


「ほ、本当?ありがとう。でも、やっぱり恥ずかしいなぁ」


「彼女さん、とてもお似合いですよ」


店員さんが来て、私に言う。


彼女さん!?


「ですよね?でも、めちゃくちゃ恥ずかしがるんですよ」


姫島くん、否定しない!


「ひ、姫島くん!」


買い物ってこんなにドキドキするものだっけ?


「買わなくて良かったのかよ?似合ってたのによ」


「お、お母さんにめちゃくちゃ叱られそうだし・・・」


「桜木の母ちゃん厳しいな。うちの母ちゃんならノリノリで着せるぞ」


結局買わずに店出ちゃった。


「やっぱりああいうのは綾ちゃんに任せるべきだよ!」


「桜木、あいつ男だぞ?それに、あいつはわりと筋肉と肩幅があるから肩出したらアウトだ」


「そ、そうなの!?」


「あぁ。3人の中では一番筋肉ある」


意外だなぁ。


姫島くんじゃないんだ。


「姫島くんも筋肉ありそうだよね」


「じゃあ、後で見せてやろうか?俺の身体」


「ひ、姫島くん!?」


「桜木、漫画で男子の身体描くの大変だろ?俺もよく母ちゃんの為にモデルやっからよ」


「だ、大丈夫!」


直視できないって!


「あ、陸斗には頼むなよ?あいつはもやしだから」


「そ、そんな!変態じみたお願い、高宮くんにはできないよっ」


見てみたい気持ちはあるけど。


私、変態だなぁ。


「ま、俺ならいつでも構わねぇからよ。ちゃんと鍛えてっし」


「あ、綾ちゃんに頼むよ!」


綾ちゃんなら頼みやすいし。


「桜木さ、あいつが一番危険だぞ」


「えっ?」


「あいつだって男だ。桜木は油断しすぎ」


「油断?」


「ま、俺も危険か」


「姫島くん?」


「本屋、寄っても良いか?今日発売ので買いたいのあっからよ」


「う、うん!」


私は姫島くんと本屋へ。


「姫島くん、こういうラノベ好きなんだ?」


「ああ。ヒロインがたくさん出てきてちょっとエロいから面白い。新刊買お」


「ちょ、ちょっとエロいんだ・・・」


「わわっ!引くな、桜木!」


姫島くんはラノベを何冊か手に取っている。


さすがラノベ作家志望。


「私はこの漫画にしよ。最近本誌で読んでハマり始めたんだ!ヒーローがクールでかっこいいんだ」


「少女漫画か。なんか陸斗みてぇな男だな」


「へ!?」


「さ、桜木はよ・・・黒髪の男子が好きなのか?」


「えっ?」


「前にお前が描いてた漫画もヒーローが黒髪だった」


高宮くんをモデルにしたヒーローのネームの事かな?


「確かに。あんま意識してなかったけど」


「俺も髪黒くしちゃおうかな」


「えっ?姫島くんも?」


「おぅ。イメチェンしても良い」


「姫島くんはそのままで良いと思うよ」


「えっ?」


「姫島くん、金髪がよく似合ってるし!私は良いと思う」


「桜木・・・」


「私は金髪似合わないから良いなぁ」


「さ、桜木は金髪にしなくて良いから!そのままが一番」


「ありがとう!」


「俺さ、こんな見た目だからよ。結構びびられんだよな」


「でも、姫島くんって実際不良じゃないんだよね?何でそういう格好してるの?」


「うっ・・・あいつを守る為だよ」


「あいつ?」


「陸斗を守る為に鍛えたからな」


「えっ?」


「小さい頃、あいつだけが俺を嫌わないでいてくれた。だから、守るって決めてよ。陸斗、あんなだから妬む男とかわりといてよ。陸斗を守る為に強い男を研究する内にこの外見に」


「本当に高宮くんと仲良しなんだね」


「ああ。桜木は変だと思わないのか?俺のこの厳つさ」


「私は良いと思うよ!高宮くんの為に強くなった姫島くん、かっこいいと思う」


「か、かっこいい!?照れるじゃねぇか」


「でも意外と魔法少女が好きなんだよね。ダンスと歌上手いし」


「あ、あれは琴莉の為に勉強しただけだ!」


「そっか、そっか」


最初は不良に見えてたけど、実際は姫島くんってアニメとラノベが大好きな男子高生だよね。


「鍛えたって言ってたけど、何をしたの?ケンカしてるイメージは・・・」


「陸斗に絡む奴とはケンカすっけど、基本的に空手とかボクシングだな」


「そ、そうなの!?」


「おうよ。綾斗と良い勝負かもな」


姫島くんもやっぱり強いんだなぁ。


「すごいね」


「見るのが恥ずかしいなら触ってみるか?」


「えっ!?」


「胸板」


「そ、それくらいなら大丈夫かな?」


「ほい」


姫島くんは私の手を自分の胸に当てる。


胸板厚い!


「運動部並みだね?」


「まあな」


「運動部入ろうと思わなかったの?」


「たまーに知り合いんとこで空手習いに行ってっし、なるべく時間空けたい。母さんの手伝いもあるし、琴莉を長い時間家に一人にしたくねぇし」


確かに創作研究部は長時間やる部活じゃないから丁度良いかもね。


「そうなんだ。わあ、胸板がふかふか」


「さ、桜木・・・いつまで触ってんだ?」


「ひゃっ!ごめんなさいっ!」


私のセクハラ女!!


「そんなに俺の筋肉気になるなら脱いでやるのに」


「そ、それはだめ!」


「でも、桜木は男子の身体描かなきゃだろ」


「うっ!ですよね」


「桜木はすげぇ純だなぁ。男子の身体見たことねぇの?」


「お父さんくらいしか・・・」


ちょっとメタボ体型だからモデルにはできない!


「ふーん?」


「男子と友達になったの初めてだからそういう経験無いよ。まさか高宮くん達と友達になれるとは思わなかったし。高宮くん達、私からしたら雲の上の存在というか」


「大袈裟だろ」


「だって高宮くんと姫島くんに関しては他人を寄せ付けない感じがあったし」


「まあな。陸斗と俺に近付くのってバカ女ばっかだしな。男子とはたまに話すけどよ」


「バカ女・・・」


「顔しか見てねぇんだよな。陸斗がクールで大人だと皆思い込みやがって。あいつのどこが大人だよ」


「確かにライアス好きでいつも姫島くんに甘えてるもんね」


「ああ。あいつ、俺に甘えすぎだ」


「きっと、姫島くんがお兄ちゃん気質だからじゃないかな。甘えやすいんだよ」


「桜木も甘えて良いからな」


「わ、私!?」


「そ。俺がこんなに気になる女子って初めてだし。基本的に女は鬱陶しいって考え方だから」


「そ、そっか」


「お、この漫画も新刊出てたんだ。買ってこう」


姫島くんと仲良くなれてきたんだなぁ、私。


「美味しい!!」


「だろ?ここのフルーツタルト一番好きなんだわ」


買い物を済ませると、私は姫島くんとカフェへ。


私と姫島くんはフルーツタルトを食べる。


「姫島くん、甘い物好きなんだ」


「わ、わりぃかよ?」


「ううん。姫島くんのそういうとこ可愛くて好きだな」


「好き!?」


姫島くん、顔真っ赤だ。




「このアップルティーも美味しい!」


「あっと言う間だったな。もう夕方だぜ?」


「本当だ。早いね」


「なぁ、桜木」


「ん?」


「今日は帰したくねぇな、桜木の事」


姫島くんはいきなり私の手を取り、わ、を見つめ言う。


ひ、姫島くん!?


「え、えっと・・・」


「ぷっ。がちで困った顔しやがって」


「えっ!冗談なの!?」


「マジにすんなよ。バーカ」


姫島くんは舌を出し、言う。


「うっ・・・」


「桜木のそういうピュアすぎるとこ、好きだな」


姫島くんは私の頭を撫で、言う。


「す、好き!?」


「さっきの仕返しだよ」


「姫島くんってちょっと意地悪なとこあるんだね」


「俺が意地悪すんのは桜木だけだぜ」


「えっ?」


「そろそろ帰るか」


「あ、うん!」


姫島くんと今日は学校以上に話せたなぁ。


すごく嬉しい。


「はぁ、疲れたな。久々にはしゃいだわ」


「たくさん買ったよね、姫島くん」


「ああ。ラノベと漫画ばっかだけどな」


私達は電車に乗って帰る。


だけど


「肩貸せ、桜木」


「ひゃっ!ひ、姫島くん!?」


「着いたら起こせ」


姫島くんは私の肩に寄りかかる。


「あ、あの?」


「俺だって甘えたい気分になんだよ。良いだろ?」


「は、はい」


姫島くんはすぐに眠ってしまった。


姫島くん、寝顔可愛らしいなぁ。


って私!


私には高宮くんという好きな人が!!


でも


寝顔にキュンとした。


あんまり可愛い可愛い言うと、綾ちゃんみたいに姫島くんに叱られちゃうから言わないでおこう。


今日はたくさん姫島くんの事が知れた1日だった。


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