第20話 ナイ君の日常

「お前はどうしてそう簡単に人間などに現状

を打ち明けてしまうのだ。」


 は愕然とした。

の監視を依頼していた杉江統一は、

が入っている身体である七野修太郎

の友人に中身のことを話してしまっていた。


「いや、彼らはちゃんと中身が違うことに気

が付いていましたよ。だったら本当のことを

話した方がいいと思いまして。ただ彼らが他

の人間にそのまま話をしても誰も信用しない

でしょうから広がる可能性はないと思います

よ。彼らでさえ半信半疑でしょうから。」


「まあ、それはそうだが。我にしても未だに

起こったことが信じられないからな。」


「それで、はどうでした?」


「うむ、彼の地には膨大な書物、資料が雑多

に保管されておった。円錐型の司書が居った

が役にはたたんな。地球人が一人いたので、

その者に事情を説明し解決策を探すよう依頼

して来た。」


「なんだ、さんも話を

してるじゃないですか。」


「まあ、それは、そうなんだが。彼の者はお

前も知っているであろうラバン=シュリュズ

ベリィの縁者の者であった。遺志を継いで調

べ物をしておったので、一時休戦というか、

双方にとっても一大事ということで協力して

もらうことになったのだ。信用してもいいの

ではないか、と思ってな。」


「それはいい判断でしたね。あなたよりよっ

ぽど上手く見つけ出せるかもしれません。」


「それは、我を馬鹿にしておるのか?」


「いいえ、向き不向きがある、ということで

すよ。この宇宙であなたほど有能な方はいま

せん。但し、じっくりと何かを探す、という

ことにはあまの向いていないように思います

から。」


 は杉江の上から見た

ような言い方が気に入らなかったが、自身で

も向いていないとは思っていたので、納得す

るしかなかった。


「では、我は他にもやることがあるので、こ

こは任せた。ところで我が主は今どいずこに

いらっしゃるのだ?」


「今日は普通に学校に行ってらっしゃいます

よ。あの方も地道な勉強は苦手なようで、今

度のテストが思いやられます。」


「デストだと?そんなものを我があるじは受けな

ければならんのか。」


「それは、高校生ですから当たり前です。

さんも渋々了承されてここに戻られ

てからも本当に家庭教師の仕事をさせていた

だいてますよ。ところで、ちゃんとお給料は

いただけるのでしょうね?」


「金を取るつもりか。いや、お前に貸しは作

りたくないな。いいだろう、それは我がなん

とかしよう。必要以上には支払わないから、

自分で計算をしておくがいい。」


「心配していただかなくとも一般的な金額を

提示させていただきますよ。僕にはこの世界

での普通の生活もありますので。まあ大学を

中退してどうしようかと思っていた時にいた

だいたお話ですから、こちらとしても都合が

よかったので、少しお安くさせていただきま

すよ。」


 なぜ世俗的な金銭の話をしなければならな

いのか、というか、そんな話を過去した記憶

がないだった。

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