第17話 異形の司書

「お前は私がどんな要件でここを訪れたのか

を理解して案内してくれているのか?」


 の問いに円錐型の生

物(?)は答えない。ただ迷路と化した複雑

な図書館内の通路を進んでいく。歩行してい

るのか、浮遊しているのか。足のようなもの

なのか車輪が付いているのか。床が岩ででき

ているにも拘わらず移動音はほぼ無かった。


 いくつかの角を曲がったとき、一つの大き

な扉が現れた。円錐型のサイズからすると3

倍はあるだろうか。センサー式なのか、どこ

にも触れずボタンも押していないのに勝手に

扉が開いた。円錐型の司書(?)は躊躇いも

なく入る。も続く。


 中はまた、高い(多分10mはあるであろ

う)天井まである書庫の通路だ。雑多なサイ

ズの書物が煩雑に並べられている。とても整

理整頓されているようには見えない。


「お前たちはちゃんとここで本の管理をして

いるのか?分類も並べ方もいいかげんじゃな

いのか。」


 そう言うと円錐型が不意に停止した。こっ

ちを向く。但し顔に表情がある訳ではないの

で、その内心は計り知れない。自らの仕事に

ケチを付けられて憤慨しているようにも見え

る。円錐型はまた向き直して進みだした。結

局何も話さないし精神に直接語り掛けたりも

して来ない。コミュニケーションの方法が見

当たらなかった。


 こんどは円錐型がなんとか通れるようなサ

イズの扉の前に出た。自動で扉が開く。中は

天井まで2mもない狭い空間が続いている。

天井まで書庫があるのは同じだ。天井まであ

るので通った通路以外の通路に何があるのか

は判らない。同じように書庫が並んでいるの

であろう。


 それにしても、こんなにサイズが違う必要

があるのだろうか。種々雑多な生物が訪れる

かもしれないので、こんなことになっている

のか。だとしたら、もっと汎用サイズに統一

すればいいものを。

自らのサイズを自由に変えられるので問題な

いが、大きな生物が来たら今いる通路は通れ

ないだろう。但し、知性のある程度進んだ生

物はほぼ地球の人類サイズになってしまうの

で、問題ないのだろう。


 円錐型司書がやっと停止した。触手のよう

な物を伸ばして指示した時には、また小さな

ドアがあった。その中には人の気配がする。

誰かが書物を閲覧しているのだ。地球の人間

のようだった。ここに来るまで

は特に不定形で混沌とした形を取っ

てきたのだが、相手を驚かさないよう人間の

形に自身を変えてから入ることにした。神父

の姿だ。最近はこの姿を用いていることが多

い。一応これでも気を使っているのだ。


 ドアを開けて中に入った。少し大きめの閲

覧室のようだ。一人だけ熱心に書物を読んで

いる人間がいる。どこかで見たことがあるよ

うな気もするが、見知った顔ではなかった。


「あっ。」


 入ると向こうが気が付いた。そして、それ

はこちらがであること

にも気が付いているようだった。やはり見知

った顔ではないが、相手はどうやらこちらを

知っている。

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