第3話 非日常の始まり

「お前はいったいどこの誰なんだ?」


 外見上寸分違いないに向かって

そんな風に問いかけることには違和感がある

が我が主ではないことには確信があった。


「僕はただの高校生ですよ。七野修太郎、○

○県立明星高校普通科1-A、出席番号24

番。」


「そのような細かい情報はよい。なぜ我があるじ

の中に入っているのか。」


「それが判れば苦労はしません。

君は、このさんのしもべ

んですよね?なら、なんとかしないと『我が

あるじ』から叱られるんじゃないですか?」


 確かにそうだった。我があるじは忌々しい奴ら

の所為でこの場所に幽閉されて久しい。予定

調和であった先の戦いで、予定どおり敗北し

幽閉された。それは、この宇宙にとって必要

不可欠なことだった。


 地球あたりの人類では観測も認識もできな

い、彼らがダークマターやダークエネルギー

と呼んでいる物は我々の存在そのものだ。


 その中心たる我があるじが勝利しその勢力を増

大させてしまうと宇宙全体のバランスが崩れ

ビッククランチという大収縮が発生してしま

う。我があるじはどうしても幽閉されなくてはな

らなかったのだ。忌々しい奴らは我があるじを封

印するだけで終わろうとするが、もし我があるじ

が勝利した時には相手を悉く消滅させてしま

う。そうなると宇宙の危機が訪れてしまう。

我があるじには敗北していただくしか方法がなか

った。


 しかし私は我があるじを開放し、かつこの宇宙

のバランスを保つ方法を模索している。数億

年、数十億年、そんなことを続けているのだ。


 我があるじは「白痴の王」の名のとおり忌々し

い奴らからその知性をほぼ奪われている。そ

うは言っても人間には到底及ばない高いレベ

ルは保っているのだが。


 それが今回のことで我があるじの開放を招き、

全宇宙のバランスを崩してしまうのは時期尚

早だ。まだ解決策は見つかっていない。忌々

しい奴らも今は封印されているのではなくた

だの眠りについている。いま、この時期は拙

い。我があるじが圧倒的に勝利してしまう。


「とりあえず、お前はここにじっとして居る

のだ。私は我があるじ、というかお前の体の所に

確認しに行ってくる。下手に動いてもしこの

幽閉場所を壊しでもしたら、この宇宙は吹っ

飛んでしまうと肝に銘じておけ。」


「ええぇ、そんなぁ。じっとしてるのって退

屈じゃないですか。何かパソコンとかスマホ

はないんですか?」


「そんなものがあっても、ここで使えるわけ

がないだろう。くれぐれもじっとしておるの

だそ。」


「できるかなぁ。あ、それとこのフルートの

音はなんとかならないんですか?あんまり好

きな感じの曲じゃないんですけど。」


「お前の好き嫌いは関係ない。この曲を流し

続けないと我があるじの体が持たないのだ。我慢

して聞き続けろ。」


 そういうとは来た時

と同じように一瞬で消えてしまった。


「ああぁ、ナイ君、行かないでよ~。」


「ナイ君とは誰のことだ。」


 またいきなり戻ってきた。


「だって、って長いじ

ゃないですかぁ。ナイ君でいいでしょ?」


「勝手にしろ。」


 そう言い残してナイ君は再び消えたのだっ

た。

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