第12話ブラッキーだって人語がわかるニャン 

10月10日 金曜日

ブラッキーだって人語がわかるニャン 

●ブラッキーがわたしの膝にのってすやすやねむっていた。となりのソファにはカミサンが座り二人で「ドクターX〜外科医・大門未知子」を観ていた。

「わたし失敗しないので」というキメ台詞がいつでるかと楽しみにしていた。

「この印籠が目に入らぬか」と同じノリで楽しいセリフだ。

●「ブラッキーがリリと仲良くしてくれるといいのにな」

コマーシャルの時間にカミサンに話しかけた。

ところがである。

わたしの膝でネテいたはずのブラッキーがうなりだした。すさまじい唸り声だ。

●「リリのこと話したから、ブラッキーにはわかったのよ」

カミサンの驚きの声。

タヌキ寝入り、ならぬ、猫ねいり。寝たふりをして、わたしたちの会話に密かに耳を傾けていたのだ。

「ブラッキー。ごめんね。ブラッキーはかわいいのよ。リリは迷い猫で玄関で鳴いていたから、飼ってあげたの。だから仲良くして」

いくらナダメテモ、ブラッキーのうなりごえはしばらくやまなかった。

「ブラッキー。かわいいよ。いい子だね」

それでも、鳴きやまなかった。えっ、ホンマカイナ。猫に人の言葉がわかるの。

●ブラッキーの鳴き声に――女の情念のようなものを感じた。

まるでこれでは、浮気がばれて、本妻に叱られているようなものだ。

実生活では、そうした経験はない。

だから観念的には「こんな気持ちなのかな」とそうした修羅場の心情を理解していた。でも、これからはそうした小説を書くときにはよりリアルに書けるだろう。

●小説家は転んでもただでは起きないのである。

浮気がばれて、カミサンにドズカレル小説でも書こうかな。

ブラッキーの唸り声のおかげで、わたしの芸域が広がった一幕でした。

10月12日 日曜日

立石。孫の運動会に参加

●昨日は孫の幼稚園の運動会で立石の梅田小学校まででかけた。

幼稚園の庭が狭いので小学校の庭を借りて開催された。

久しぶりで息子夫婦に会えてうれしかった。孫の成長ぶりにおどろかされた。

もう言葉も、大人、なんでもわかる。

●カミサンは「孫と走る」運動に参加した。

孫の手をひいてグランドを走るカミサン。

まだまだ若いね。息切れ一つしない。すごいね。

●終わってから本奥戸橋の傍の居酒屋で5人で食事。

わたしは徳利を二本。

酔った。

うきうきするような酔い心地。

もう一軒ハシゴザケ。

●10時帰宅。

二匹の愛する猫、ブラッキ―とリリが寄って来た。

リリがわたしの足にスリスリしてくれた。

かわいい。GG、メロメロ。

10月16日 木曜日

ブラッキーの夜遊びにつきあって……

●ブラッキーは塾が終わった後、塾生が開けた引き戸から、外に出て行ってしまった。リリを飼うことに決めてからのこのひと月、彼女はナーバスになっている。ブラッキ―。ヤキモチヤカナイデ。

ムリもないか。いままで18年? くらい、ずっとひとりでわたしたち老夫婦と一緒に気ままに暮らして来たのだから。この寒いのに、どこをほっつきあるいているのやら……。

ストーカーに襲われていないかと、カミサンと寝ずにまっていた。

ともかく、このあたりは雄のノラちゃんばかり。

危ない夜歩きはやめてくれればいいのに。

ギャと絶叫して家に逃げ込んでくることがままある。

あんがい、スリルを楽しんでいるのかな。

●結局、帰ってきたのは――。

「あらまぁ、ゴゼンサマね」とカミサンが呆れていた。

●体重計にのった。ゲッ、75キロ。

そうだ、驚くことはない。寒くなって来た。厚着している。

2キロは身につけている。ということは、73キロだ。

いつもの体重だぁ。と一安心。

でも、できれば、70キロくらいまでオトシタイものだ。

●新しく迷い猫のリリを、わが家にむかえたり。

ブラッキーのナーバス、いらいらにつきあったり。

バラが枯れそうだとカミサンがおおさわぎしたり。

ともかく平和な生活がつづいている。

●男性の健康年齢は71歳くらいとのこと。

こちらは 81歳。まだまだ病気などしていられない。

執筆、旧作の手入れで8時間は費やしている。

掘りごたつの仕事場で、これから北国の寒い冬を過すことになる。

10月18日 土曜日

リリの愛らしさ

●リリもだいぶわが家に慣れてきた。ブラッキーの威嚇のウナリ声にも耐えている。

もっとも、ブラッキーの唸り声は大分低くなった。

おもしろいことに、リリはブラッキーに遊んでもらいたいらしく、いくらいやがられてもブラッキーに身を寄せていく。

「ねえ、ブラッキーちゃん。キライ、嫌いも、好きのうちだよね。わたしことスキよね」

といっているようだ。人間だったらブラッキーからみたら孫の、孫の孫……のようなリリだ。

はやく二匹で仲良くからだを寄せあって日向ぼっこする姿をみたいものだ。

●リリは子猫だから、シグサもおもしろい。

得意技はニャン遁、カーテン隠れの術だ。

カーテンの影に隠れてシツポだけが見えている。

笑っちゃいますよね。

そのうえ、シッポをふっている。

猫ですね。いかにも、子猫らしいしぐさですね。

●一部屋ひとへや、ニオイをかぎながら歩き回っていたが、いまでは縦横無尽に走り回っている。ともかく築100年のボロヤ。本とわたしの重みでぎすぎすしている部屋もあるほどだ。

でも、部屋数、なんとナント、14、床面積100坪。

端からはしまで、25メートル。

子猫にとっては十分過ぎる広さだろう。

●リリはときどき消える。

いかなる術を使っているのか。

「リリ、リリ。どこにいるの」

とカミサンが呼びかけながら部屋から部屋へと探しまわっても見つからない。

人間ではないから、バー、ではない。

ニャといってふいにカミサンの足元にワキでる。

カミサンの歓喜。

「どこにいっていたのよ。リリちゃん」

●カミサンは母性本能を刺激されるらしい。

若返ったようだ。

リリと話しているカミサンの声がいつになく華やいでいる。

11月23日 日曜日

猫同士じゃない。仲良くしてよ。

●暖かな一日だった。午後カミサンとベニマル。黒川に白サギ一羽。青鷺を一羽見る。鳥を見るといつも幸せな気分になるのはどうしてなのだろうか。

●猫ちゃんの餌を買う。リリが増えたので結構重いほど買いこんだ。ブラッキーがリリと仲良くしてくれればいいのだが。

まだ駄目。リリがちかよると猫パンチをくりだす。リリの目でもやられたらたいへんだ。二匹が同時に同じ部屋にいないようにするので、気配りがたいへんだ。

●ブラッキーもかんがえてみると、可哀そうだ。毎晩わたしの腕の中で魘されている。 

11月28日 金曜日

リリは噛みつき魔。リリのヤンチャはいつ治る。

●新参者の子猫リリのヤンチャがとまらない。玄関先にふいに訪れ、カミサンの足元にスリスリシテ上目ズカイの眼差しで、ニャニャと鳴かれた。もうこうなると猫好きは放っておけない。家に迎え入れたのだが――。

●「もう、こんなネコはじめて」

ミサンがネをあげている。

畳のヘリの黒い布はボロボロになるまでくいちぎる。浴室の足ふきマットなどズタズタ。

わたしの、原稿までカミちぎった。ありとあらゆるものに食いついていく。

添い寝しているカミサンの髪にまで噛みつくにいたっては、彼女の嘆きがよく理解できる。薄くなっていくカミサンの髪に噛みつくなんぞ、神をも恐れぬ噛みつき魔だ。

しかたないので、防衛手段として、フードつきのジャンパーで寝ている彼女。

●バラの花の活けてある花瓶を倒す。

その水をさも美味しそうにピチャピチャなめている。

食卓は大洪水。

カミサンはオオワラハ。

リリのイダズラの後始末で、リリの後から部屋から部屋へとかけめぐっている。

●でもいちばんの被害者は、ブラッキーだ。彼女はノイローゼ状態だ。

外に逃げだしている。

●ソレデモ、リリが可愛いい。

これが猫好き老夫婦の日常です。

リリのオイタ、ヤンチャはいつ治るのでしょうか。

12月4日 木曜日

ブラッキーがいちばんかわいい季節。

●ねずみ男になる季節が今年もやって来た。ただひたすら、黒ずくめの衣服をきて寝る。頭からはスッポリと黒のニットの冬帽子をかぶる。あまり寒いと顎の下まで引き下げる。そして、黒のトックリのセェター。フリ―スのスラックス。もちろん、黒。ねずみ男のしあがりだ。フィギァでないからネズミ男そっくりというわけではない。

身長170センチ。体重。このところ血圧の上昇が恐いのでダイエットした。それでも73キロ。こんな肥満体のねずみ男なんて、おかしいですよね。実写版では大泉洋がやっていたのだったかしら。

●そんなネズミに、黒猫、ブラッキーがよりそってネテいる。笑っちゃいますね。呉越同舟、ならぬ、猫鼠同衾というところだ。

●ブラッキーは室温が15°以下になると寒いのか、わたしの寝床にもぐりこんでくる。わたしは10°以下になると頭の毛が薄いので寒い。

上記の寝支度でベッドにたどりつく。

まったく、歳をとったものだ。

一日がんばるとドタっと寝床に倒れこむ。

疲れやすくなった。

直ぐに寝こむ。

夜半に目が覚めてみると、

隣でブラッキーが鼻息をたてて平和にねむっている。

●今年も、冬の季節がやって来た。

猫がいちばんかわいい季節だ。

12月7日 日曜日

カミサンの風邪まだ治りません。

●今朝も寒かった。

夜のはずれで消防車のサイレンが遠ざかっていく。どこかで、冬の火事が発生している。そのもの悲しいひびきを聞いているうちに目が冴えてしまった。

●起きてみると、まだ3時だった。トイレに行っている間に、寝床が冷えてしまった。そのまま起きることにした。室温4°。

●ブラッキーもカタコトと階段をおりてきた。やはりひとりでは寂しいのだろう。餌をあげる。

リリはカミサンのベッドで白河夜船。

わたしはこのところ逆流性食道炎。なにか少し食べたほうがいいだろうと、チ―ズをいちまい食べて、お湯を飲む。昨日蛇口を新品と変えた。水の出が凄く優しい。

●カミサンは風の薬を飲んでいる。すっかり食欲がない。昨夜は、「こがねちゃん弁当」を買いに一人で出かけた。いつもはカミサンが一緒なのに独りで夜の街をあるくのは久しぶりだ。

●どちらかが健康であればいいのだが、二人して風邪でもひいて寝こむようなことになったら、たいへんだな。などと、不吉なことを考えながら家路についた。

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