‪はじまりは、「消えた友達」からの不思議な手紙だった‬

物語のはじまりは、誰かの悪戯かと疑われるような荒唐無稽な手紙。差出人は「世界から存在を消された」という友人。幼馴染の二人組は、本当は三人組だった?
高校生の日常にかすかな波風を起こす、小さな不思議。

ここからして、なんだか胸がときめきませんか?
どこかにいる(いた)はずの、自分のことを百パーセント理解してくれる自分だけの友達。それは実在する人々とは違った魅力を持っていて、時には隣にいる親友や家族よりも身近で頼もしいもの。
人見知りで友達を作るのが苦手な少年は、次第にその手紙の差出人の存在を信じ、自分にしか見えない消えた友人を感じられるようになっていきます。
そんな幼馴染の変化を心配しつつも見守るもう一人の少年。

やがて二人の前に、本物の(?)三人目が現れて……。

田舎の学校に通う男子高校生の日常。幼馴染。夏休み。なんとも牧歌的でノスタルジックな雰囲気の中で、二人の少年の心の機微が繊細に、丁寧に、それでいて軽快に綴られていきます。

ところで、物語は二人の主人公の視点で交互に語られていくのですが、その話の運びに唸らされました。
一人称で語り手が変わる小説というのはどちらかというと食わず嫌いだったのですが(だったら最初から三人称でいいんじゃないの? と)、この作品ではその手法を上手く利用し、それでしか成立しない独特の物語運びになっています。
数ページ読み進めて「その」シーンに出会った時は、思わず拍手が出そうになりました。

読み終えた後、ちょっと昔の友達に会いたくなる。そんな素敵な一作です。

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