第3話 九条、ダンジョンで金儲けができることを知る

『確かに私はこことは違う世界からやってきました。このダンジョンを消滅させる為に』


どうやらガチで異世界から来たらしい。で、そしてここはダンジョン、と。


「てことはお前は異世界の存在でここを封印する為に来たということか?」


『はい。正確には私達の世界ルーナリアからこの世界に魔素が流れ込みダンジョンが具現化してしまったので被害を拡大させないようにする為、最終的には消滅させることを目的に、神ルアリアより作り出された存在です。』


なるほどね。異世界の神だかなんだか知らないが超越的な存在が作った防御システムみたいなもんか。

で、その防御システムとしてここにいる水晶玉がダンジョンに派遣されているって感じか。


「大体分かった。それでここはダンジョンなんだな?」


『はい。ここはダンジョンです。まだ出来たばかりですから私のダンジョンコアとしての能力でモンスターがここまで来ないようにしていますので今のところ危険はありません。』


「ほう。いるのかモンスター。」


『はい。魔素が集まることによりダンジョンが具現化します。そしてその魔素と知性体の欲望や記憶によってダンジョン内が成長しモンスターも生まれます。』


ほう。ダンジョンにモンスターか。

なるほどなるほど。


「うん。よく分かった。じゃあ御縁がなかったってことで。」


『ええ!?そこは「皆が危ない!僕が皆守るんだ!」って言うところじゃないですか?』


なんだそれ。そういうのは厨二病患者かハーレムリア充にでも頼んどけよ。


「アホか。そんなのは架空の生き物か現実を認識してない馬鹿だけだ。一般人は危険から遠ざかって野次馬するのがせいぜいだ。」


『そうなんですか?私達の世界に来る異世界の方は皆さんそういう方ばかりと聞いていたのでこちらでもそういうものだと思ったんですが……。』


「そりゃ、ただの鈍感リア充とかだろ?姫様とか騎士とか手あたり次第に惚れさせて回りに迷惑と偽善を押し付けるって感じとかだろ。」


『過去の勇者召喚の記録ではどうやらそういう方もいたみたいですが……ですが、自分達の住む世界ですよね?私自身は戦う力がないので協力者が必要なんです!』


そっちの世界って勇者召喚もあるんだ。

なんか典型的な剣と魔法のファンタジー成分しか感じないな。


「あっそう。とにかく俺は金にもならずに危険なことはゴメンだよ。こちとら明日の飯代考えるほうが大事だ。」


収入少ない上に借金あるから生活キツイんだよ。


『そんなにお金が大切ですか?お金以外に大切なものもあるんじゃないですか?』


「そんなものはない。いいか?金は命より重いんだよ。人間は飯を食うのも家に住むのもそして存在しているだけでも金がかかっているんだ。」


これは俺の持論だが人間は金がなければ何もできない。そもそも国にいるだけで住民税という税金がかかり、家にいるだけでも金がかかる。当然生きる為に食事をするのも金が発生する。つまり衣食住は金があって初めてもらえる権利というわけだ。

日本という国はそれができないやつは存在すら許されない厳しい世界なんだよ。一度、底辺を這いずり回れば良く分かる。


『厳しい世界なんですね…。で、でも少しくらい手伝ってくれても…それにモンスターを倒せばお金になりますし……』


ちょっと待て。


「すまん。よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」


『え…?手伝ってくれても…って…』


「ああ、違うそこじゃない。モンスターを倒せば金になるのか?」


『は、はい。モンスターの種類にもよるけど魔素からモンスターが生まれる時、知性体の欲望とか記憶を反映しているからお金を持っているモンスターとか魔石や素材を落とすモンスターもいます。』


「ほう。それを早く言ってくれ。そんな危険な生き物は確かに駆除しないとな!よし!モンスターを倒そう!すぐ倒そう!そう今すぐにでも!」


こんなところに副業の種が転がっているなら話は別だ。

狩りつくしてやろう。


『えぇ…、なにこの変わり身…。』


水晶玉はゲッソリした顔を幻視させる声音を連想させたがそんな些細なことだと思う。

そうと決まったら早速ダンジョン攻略といこうじゃないか。


「まぁ気にするな。お前はダンジョン攻略して欲しいんだろ?」


『えぇ…そうなんですが…。』


「なら問題ないだろう?お前はダンジョン攻略してもらう。俺はダンジョンで生活費を稼ぐ。winwinな関係じゃないか。」


『そうですけど…うぅ……納得できますが今までのことを考えると納得したくないです……。』


水晶玉はピカピカと光りながら不満そうに口にするが知ったことではない。

それにこいつの目的にも合致しているし問題はないはずだ。


「ようし、じゃあ早速ダンジョン攻略の準備をしようか。…その前に聞くことがある。」


『は、はい。なんですか?』


「お前の名前は?ほら水晶玉とかお前とかいつまで呼んでもしょうがないだろ?」


『私の名前ですか…正式名称はダンジョンコアです。個別名称はないです。』


「ならお前のことはこれからコアと呼ぼう。俺は九条誠クジョウマコトだ。コア、改めてよろしくな。」


こうして俺とコアは協力してダンジョン攻略をすることになった。

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