第22話 僕の2号はやっぱり、男(漢)
僕の目は死んだ魚の目、日照不足、シャトルランな感じだった。
うん、何考えているかわからないが、とりあえず、だ。
僕の目は確実に白目を剥いているに違いない。
何故なら、
「きゃるるるん」
不気味なピンク色の幼女(胸おっきい)な魔女っ娘が左手を奇妙な小指と人差し指と親指を立てて、下を出してウィンクしている。
うん、何だかもうよくわからない。
「帰る」
とりあえず、そうだな。借りているルディアの客間で寝て一日寝れば、その悪夢は確実に終わる。絶対に終わるんだ。どこまでも終わる。世界も終わる。
あれ、世界が終わったら何もかも終わる。ああ、そうか、この世界を終わらせればいいんだ。
よし、人形を呼ぼう。
「ストーーーップ。何でそんなハイライトが消えそうな目で、杖を持っているの? お姉ちゃん。その顔、どう考えても般若とかそういう系統の顔。確実にアイドル魔女っ娘が見せたらアウト! マネージャーさんの芽衣子さんが確実に怒る顔だよ。プンプン」
「誰がこんな顔にさせたかわかって言っているのか」
「ンンンン? 誰?」
目線を上に上げながら、左手人差し指を頬にあてて私可愛いしアピールをしている時点でしらばっくれているのがよくわかる。どこまでもわかる。
「で、あれはどうしたい? あのポーズをしながら、あのアデライドは村の中に走っていったが」
アンリさんは首を振って、アメリカンなやれやれとしていそうな演技をしているが、眼が笑っている。あれは確実に面白そうなことを思っている悪い顔。僕の味方はどこにもいない。
「アンリさん、それは早くいってほしかった。やばい、あんなのが村の中に行けばカオスになる」
「まあ、君は疲れるだろう。私も事態を収拾するのに疲れる。まあ、仕方ないとは思うが、別に止める必要はない。少しだけ、本当に少しだけ不必要な手間が増えるだけだ。わかるかな」
「わかりません。全然わかりません。これっぽっちもわっっっかりたくありません! むしろわかったらここに魔女っ娘2号爆誕。僕の2号として、観光の目玉にするとか言うと思う」
「いい! それいいアイデア。いただきよっ!」
ああっ、美少女を飲みながらの飲んだくれエルフが理解の遅れた頭で気づいてしまった。
「君も損な性格をしているね」
「よく言われます……って、言うよりも今やることは一つ」
僕がやらなければいけないこととはあの魔女っ娘(漢)の暴走を止めること。でないと、平穏がぶち破られる。
「そんなのあった?」
「いや、あるわけがない」
「むしろ、楽しいからOKだと思う。んぐんぐぷはーっ」
くそっ、急げ。味方はどこにもいない。
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「ええいっ、正義の魔女っ娘2号。アデライドちゃん登場よ」
「ううっ、師匠。良かったですね。良かったですね」
そして、村の広場の目の前、僕の恥ずかしい石像建てられた場所で、さらに恥ずかしいショーが繰り広げられていた。
やんややんやとドワーフのオッサンが囃し立てている。
「ママ、あれなに?」
「しっ、見ちゃだめよ。早くいきましょう」
「えー。私もああなりたいから」
「駄目よ。魔女っ娘はとてもとても偉い人だと思うけど、あの格好はあなたが大人になったら、絶対に後悔するから」
うん、絶賛後悔中。かつ、公開処刑をしている馬鹿な魔女っ娘とオカマのコンビは確実にイロモノか、腫れもの扱いでしかない。
これは確実に後ろから召喚したゴーレム(木人Ver)をゆっくりと呼び寄せて、じっくりと捕まえるしかない。
ゆっくり、ゆっくりと、落ち着いて息を吸って、吐いて。さらに息を吸って、吐いて。
よく落ち着いて、よく見て、石像からゆっくりと杖を操って、今そこだっ。
「ムッ、これはいけないわっ」
バキッとステッキをふるう魔女っ娘(漢)の腕は華奢な見た目のくせに木像のゴーレムの頭をいとも簡単に叩き潰した。
何という馬鹿力。
「まあ、見た目だけだからね。力はそんなに変わってはいないから。ああなるのは予想できたかな」
芽衣子じゃなくて、母さん。あれで僕になにをさせたかったのか、この世界から帰ったら半日くらい問い詰めたい。
という完全なイロモノパーティが一日続いた。
僕の心はボロボロだ。確実に心の何かがバキバキ折れていく感覚がもう聞こえて、ああ、耳鳴りもしてきた。
助けて。
タスキテ。
誰か。
あ、意識がぷっつん――
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