第20話 僕は無駄な努力を見つめるしかなかった
「まあまあ、ミズキよ。綺麗な女の子の顔が見れない顔になっているのはどうかと思うぞ」
「アンリさん。僕は……まあ、いいです」
怒っても仕方ないわけでこれ以上何を言っても無駄な気がするので、深呼吸を僕はする。
「どうしたの? この子、可愛い顔なのに。私がすごくなりたい顔をしているのに、顔芸をしているみたいに怖い顔をしているのだけれども」
「色々複雑なお年頃なのだ。この魔女っ娘女神様は。で、私たちを頼りに来たわけか」
「そうよ。だから、私を女の子にして」
ぷるぷる、ぴくーん。
胸筋が震えて、何というか漢の中の漢にしか見えない汚っさん。手のつけようがない。匙を僕は投げる宣告を告げようと。
「はいはーい。私にいいことがあります」
「何だ酔っ払い」
「私の扱い雑過ぎない? ちょっとは私を敬いなさいよ。私はエルフですよ。美しい顔をしたエルフなんですよ」
確かに見た目だけは良い。あとは飲んだくれているしかないろくでもないエルフなのだが。ああ、不真面目とか不良とか付けてもいいかもしれない。
「あー二人とも疑っていますね。私だって、できるときはできるのよ。エルフ特性の美容液とか、美容体操。勿論、ごはんの食べ方とかそんなが色々あるし。もちろん、最終兵器の、ああ、あれは激痛と泣き叫ぶとの記憶喪失と幼児退行の危険性があるから、必要な時は割と念書とか必要だからどうしようかなと思うけど」
うん、最初の方は問題はないと思うけれども、最後の方は怪しいというか、確実にすべてを犠牲にして、何かを得るための冒険というか拷問に近いものを感じてしまうのは気のせいだろうか。
考えるとどうにもならなくなるから考えるのはやめよう。
あと、アンリさんが眉間にしわを非常に寄せて、口をゆがませているのとかそんなものが見えているけれども見なかったことにしよう。
「はあ、またルディア。あの試練とかいうリスクまみれのことをやろうとしているのか」
「でも、心は~非常に美しくなりますよ。無垢な少女になると思うのよ~」
ハイ。僕はもう聞きませんよ。多分聞いたら発狂する何かですよ。
「とりあえず、どうでもいいからエルフ様のやり方でも何でもよいから私を女の子に変えてくれるなら何でもいいから」
「ほう、それならばまずは、このお風呂から」
ルディアの女の子になるための何かが始まった。
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「で、そんな簡単にできるわけないと思うんですが」
とりあえず、3時間ほど好きにさせてみたが、お風呂に入らせて、胸の毛を剃ったりして、何だかアデライドがボディビルダーになっていくのを見ているだけ、という印象しかない。
つるーん、むりーん。
とばかりにすね毛やら体がてかっていって綺麗になっていくのはわかるのだが、それだけでしかない。
「ああ、私もそう思ってはいる。だが、まあ、せっかくルディアがやる気になっているのだ。ある程度はやらせてやってもいいだろう」
「ああ~ん。師匠の美容が良くなっていくから私もやってみたいわぁ~ん」
もう一人の汚っさんが尻をフリフリしながら、エルフエステと化しているルディアの姿を見て、そんなことを言っている。
見た目はあれだが、内容は的を得ているのが何となく、漢女なんだなと思ってしまうわけだが。
「すごい気持ちいでしょ。そして、綺麗な女に近づいていく気はしないですか?」
「そうねえ。確かに体がどんどん綺麗になっていくのはわかるけれども、何かが違う気がするのよね」
脳筋のかおをしていても、まあアデライドのおっさんは違和感は感じているらしい。
そして、ルディアの顔がどんどん、険しくなり、何かやばいことを考える直前のような気がしてきたのは僕の気のせいだろうか。
そして、薬草の薬を全身に塗っていくのが終わった時、ルディアの雰囲気が変わったのに気づいた。
「やはり、ここは女になるための魔術試練を受けてもらうしかないわ」
目が少々据わって危ない雰囲気。
恐らく先ほどの穏便でない何かをしようとしているのがわかる。
「割とネタが切れるのが遅かったな。まあ、半日ほど続いたが、それが限界か。はいはい。お酒あげるから、やめましょうね」
「HA! NA! SE!」
アンリさんに両肩をがっしりとつかまれたルディアは、その拘束から逃れようと暴れるが、竜の力なんてエルフの力では解くことなんてできるわけがない。
ずるずると自分の仕事場から締め出されようとするルディア。
「そんなところに私参上!」
アッハッハッ! ばかりにドアを開けてやってきたのは話をややっこしくするトラブルメーカーこと、自称魔王。
「さっきまで倒れてたが大丈夫?」
「筋肉にやられていたけど、そんなのどうでもいいじゃない!」
と言いつつも声が少々上ずっている。しかも、悔しそうな表情が見える。
「気分はそこまで戻っていないといったところか」
「はいはい。何もできない魔女っ娘女神様はおいといて、私ならできる!」
やる気もないのがある意味正しいのだけれども、何もしていなかったのは事実。
言われても痛くもかゆくもないのだけれども。
「本当にできるの?」
ずいっと迫るタンクトップのつるつる筋肉になったおっさんに芽衣子の顔がゆがむ。
「え、ええ。顔を寄せないで。胸の筋肉をぴくぴくさせないで。こ、これよ」
と言って、芽衣子が取り出したのは一本の僕が持たされる魔女っ娘ステッキを一回り小さくしたようなもの。
「これを使うのほら、そして、言うの。メイクア〇〇!」
「ああああああ、危ない。それは非常に危ないのだ。芽衣子君、君は非常に危ないことを言おうとしている!」
慌てるアンリさん。
声がどうもそのメ〇クア〇プが似合いそうな声で言われると何故か危ないにおいがしてたまらない。
「言うわ。メイ〇ア〇プ!」
アデライドがそういうと、彼(女?)の体が光に包まれる。
「ヤメロオオオオオオ。次の話大丈夫なのか!」
アンリさんの言葉の方がよくわからないが、ステッキの力がアデライドに働いたことだけが分かったのだった。
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