第18話 僕は見てくれだけは娘であることだけはほっとした

 ルディアに連れられて、村役場の会議を行うような部屋に入る。

 そこで椅子に座って、エルフは両手を組みながら、ゆっくりと言葉を吐き出した。


「私の町興しイベントウハウハ生活って、どこにあるんでしょうか」


 本音駄々洩れのロクでもないエルフの発言。

 正直どうでもいい。

 僕はこの村から出ていき、魔女っ娘という魔術が仕えても、女の子というのにうんざりしているのだ。

 だから男の魔術師を探して何とか、男として魔術が使いたいのだ。

 それが駄目なら元の世界に帰りたいのだが、アンリさんが呼ぶことは簡単だが、帰すことは割と難しいというのだ。(棒読みで)

 芽衣子も何かうんうん、頷いていたけど目が笑っていて、帰る手段はあるのが丸わかりなのだが、僕だけがわからないせいで帰ることさえもままならない。

 で、この村から出ようにもこの田舎村は山に囲まれた国境近くの村で、現代社会に慣れ切ってしまったもやしの僕では出ることもままならないという悲しいことになっている。

 というか、逃げれば追いかけてくるのは中2病のゴスロリ魔王娘と黒竜様。

 どうしようもなく、詰んでいるように思うのは僕の気のせいだろうか。

 ああ、どうしてこんな田舎の村に呼ばれたのかもよくわからんし、わけがわからないよ。


「田舎の村で悪かったですね。だから、町興しで女神さまを呼んだりして、人を呼ぼうとしたんですよ」

「僕の心の言葉を読むのはやめてくれないカナ?」

「だって、顔に出てるし。それよりもその魔女っ娘に相応しくない無表情はやめてくれませんか!」


 何でこんなに無茶苦茶言われるんですかね。僕は男ですよ。今は魔女っ娘な姿だけど、僕は男です。

 ああ、涙出そう。


「で、いつものミズキの男を否定される寸劇はいいとして。ルディアよ。町興しイベントとは? 赤竜イベントで注目はされただろ」

「そうですね。ある程度は注目されました。でも、1週間経って、魔女っ娘饅頭とか、魔女っ娘ステッキとか、割とドキドキわくわくで準備していたものを売り出したのですが、だれっぽっちもこないわけです。どうしてでしょうか?」

「まあ、田舎だし。仕方ないことだとは思うんだが。しかも口コミで伝わるなら、1週間なんてまだまだだろうよ」

「いいえ、違ったんです。近くの町に寄って聞いたところ、そこでは全然違う噂でもちきりでした……それは」


「いいから早く言ってよ。噂があるならいいじゃない。ホラホラ。オカマとか多少の犠牲はあったけど、竜は倒せたんだから」

 煮え切らないルディアの態度に芽衣子が言葉を続けるよう促す。

 ルディアは美少年をラッパ飲みして、プハーと一息入れる。


「その男がオカマにされる修羅の村だという認識をされてしまったからです」


 うん? イマ非常ニオカシナ言葉ガ聞コエタネ。

「あ、何言ったかな?」

 

「何言っているんですか。オカマの村って言われてしまったんですよココ」

 酔っているんだね。ルディア。

 おかしなことを言っていることはよくわかるから、水を飲んできて正気に戻ってから話そう。


「オーケ、オーケ。落ち着きなさい。ルディア、酔っているんだよ。まずは息を吸って、水を飲んでからゆっくり酒を抜いてから話そう」

「酒を飲まないとやっていけねっすよっ」

 うん、息が酒臭い。


「ちょっと困ったことがあったので、きたわよん」


 そして、そこにやってきたのはオカマではなく、筋肉ムキムキ冒険者もとい、ガザックだった。


 しかもその後ろにはその後ろにはその彼(女?)を超え2メートくらいの巨漢で、茶色い髪の長いプロレスラーのような化物がいた。


「ここに私を完全無欠の女にしてくれる人がいると聞いてきたわ」

 

 僕って男だけど、魔女っ娘は本当に女の子だから見た目はノーマルなんだよね。

 僕が恥ずかしいだけで相応の姿と声はしている。

 すごくホッとする。

 でも、このプロレスラー(化物)は。


「うげ、お帰り下さい。筋肉ダルマのおっさんはお帰り下さい」

 

 気持ちはわかるけど、芽衣子……それを言ったらまずいよ。


「なんですとぉ!」

 ピンク色のタンクトップから見える鍛え上げらえた胸の筋肉をプルプルと震わせながらを芽衣子に迫った。

 そして、彼女の右手を両手で握り、ひねり潰すようにぎゅっと握る。



「そうなのよぉ! この顔を矯正したいのよッ!」


 というわけではなかったらしい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る