告白

「有難うございました!」

 洋菓子店の店員に愛想よく見送られて、店を出た。

 二月も十日過ぎともなれば世の中バレンタインデー一色で、街はチョコレートの甘い匂いやハートマークであふれかえっている。気合の入っている人ならばもっと早くから準備して、手作りのチョコレートをプレゼントと一緒に相手に贈ったりもするのだろうけれど。私は、贈ろうかどうしようかずっと迷っていて、十四日の今日、やっと決心して買ったのだった。

 右手に学校鞄、左手に今買ったばかりのチョコレートの入った袋をさげて、商店街を歩いていく。洋菓子店のロゴの入った緑色の袋が、一歩歩くごとに揺れる。高校のすぐ近くなので、商店街に学校帰りの生徒が大勢いるのはいつものことなのだけれど、気のせいか、いつもよりカップルの姿が目立つように思える。その、幸せそうな笑顔を横目で眺めながら、左手にさげていた袋を胸の前に持ち替えた。

 商店街を抜けて、大きな通りへと出る。交通量の多い交差点。歩行者用のボタンを押して信号が青に変わるのを待つ間、横断歩道の反対側、電柱の根元に供えられた花束に目をやった。ひっきりなしに通り過ぎる車の列の隙間から、白い色がちらちらとのぞく。

 青になった。歩道を渡っていくと、電柱の傍からけむりがたなびいているのが見えた。うっすらとした、線香の匂い。二ヶ月前、ここで、うちの高校の生徒が車に撥ねられたのだ。即死だった。

 歩道のアスファルトの上に鞄をおろすと、私は、線香の前にチョコレートの袋を置いた。

「先輩。受け取ってください」

 そして私は、先輩が生きている間に伝えることが叶わなかった想いを、告げた。

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