第2話 場違いなオバちゃん

めったに来ないが、ごくまれにパソコンショップに<オバちゃん>が来る。そしてときには、ニセ達人並に困ったちゃんになるのだ。


事例1 まず、中学生ぐらいの子供がゲームソフトを買って帰った。ところが、確認したにもかかわらず、その子は対応機種を間違っていくのだ。

例えば、WindowsなのにMAC専用のソフトとかね。

パッケージを開けて間違ったことに気づき、母親と一緒に来たのだ。


ところが、その母親(店員からみるとオバちゃん)は、パソコンの事を全く知らないのである。なぜうちのパソコンで動かない物を売りつけたのか、という感じで迫ってくる。


そこで、いろんなパソコンの種類があることを説明し、パッケージを開けた物は返品できないことを告げると、


「それって、サギじゃないですか?」


とのたまうのだ。そしてその後も、「資本主義社会における……」とよく分からないことをしゃべって、結局強引に返品(交換)させて帰って行ったのである。恐ろしい事だ。


事例2 オバちゃんと、大学生ぐらいの男の子がパソコンを買いに来た。いろいろカタログを見て、気に入った機種が見つかり、「これにします」と購入してくれることになった。


実はそれほど人気のない機種で、店員としては喜んで、早速箱から保証書を抜き取り、判を押して、後は商品を渡すだけとなった。


ところが、オバちゃんと大学生が、なにやらひそひそ話をしている。その時点で、店員の間に不安がよぎる。


しばらくして、オバちゃんがつかつかと寄ってきて、


「すみません、やっぱり買うのやめます」


とのたまうではないか!

店員は必死の説得にかかる。


「困ります、もう保証書に判を押してしまっているので、他のお客さんには売れないんです」


するとオバちゃんは一言、


「あら、まあ、気の毒に……」


同情するなら金払え!


結局、そのオバちゃんは買わずに帰ってしまった。


事例3 これはそれほど困ったことではないのだが……。


オバちゃんが店の中に入ってきて、店の商品を見ている。何か考え事をしているのか、うわの空だ。しばらくして、突然何かに気がついたように周りを見渡す。そして店員に一言尋ねた。


「ここって、ケーキ屋さんじゃないんですか?」


どこをどうやったらケーキ屋に見えるんだ!


まあ、確かに近くにケーキ屋はあったけどね……。


パソコンショップの店員とオバちゃんとの戦いは、今日もどこかで繰り広げられている――。


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