第30話 珍しく西口
友人の池袋君の通う大学へ遊びに行くために、西口へと出る。
遊ぶところは特になく、デパートばかり。
俺個人としては、全く興味がないので、足早に大学へと向かう。
立ち並ぶ飲食店とデパート。その間を縫うように歩いていくと、目的の大学がある。ここは他の大学と比べると、実に大学らしくない。おしゃれすぎるからだ。
友人にメールを送って、出てくるのを待つ。
その間、大学の喫煙所で相も変わらず煙草を吸う。
「お待たせー」
「ほいほい、お疲れさん」
「飯食いに行こうぜ」
「ラーメン一択」
「家系でしょ?連れていくよ」
かねてから、おすすめのラーメン屋があるとのことで、今日は連れて行ってもらうことになっている。
まあ、正直ラーメンのこともそうなのだが、今日は他に聞かなければならないことがあるのだ。
ラーメンは、おすすめというだけあって、かなり美味しかった。
初めて家系ラーメンを食べたのだが、お酢を入れると更に美味しかった。
伊達に太ってない。
ここで彼の名誉のために言っておくが、高身長イケメンであることは変わりないが、少しばかりお腹が出ているのはご愛敬だろう。
腹も膨れ、ひと段落したところで、煙草を吸うために、西口方面の喫煙所へ。
公園が隣接しており、割と大きい。
改札が目の前ということもあり、帰宅前のサラリーマンたちが多くいる。
正直、西口の喫煙所は行くことをお勧めしない。
詳しくは書けないのだが、興味がある方は、1度遠目でいいから、見てみてほしい。
食後の一服を池袋君にもさせつつ、肝心の話題に踏み込む。
「彼女できたんだって?」
「そうなんだよ!お前のおかげ!」
「マジで感謝してほしいね」
池袋君は、友人の俺からすると、完璧イケメンなのだが、なぜか決まって振られるか、彼女の悪癖が原因で別れることになってしまう。
女運が壊滅的に悪いのだ。
そんな彼は年末に彼女さんからの「ほかに好きな人ができた」
という一方的な連絡で振られてしまい、傷心していたところに、俺が紹介をしたわけだ。
「感謝しきれないわ。お互い、いい人に出会えたって、毎日すげー楽しい」
「あがめよ」
「煙草おごる」
「よろしい」
「次は、お前のばんだな」
「それは言うなよ」
お互い、傷心することが多いのもあって、相談をしあった仲だ。
が、それとこれとは別問題だ。
とりあえずは、2人がうまくいっているなら、それでいい。
あとは煙草をくれるなら嬉しい。
「なんにせよ、よかったよ。こっちも紹介したかいがあったよ」
「今度三人で旅行行こうな」
「時間があればな。というか、カップルの旅行に、彼女のいない男がついていくって、どうなのよ…」
「俺らは気にしないよ?」
「お前らが気にしなくても、俺が気にするんだよ。部屋割りとか、気になるだろ。夜とか、『ああ、お楽しみですか…』ってなるに決まってる」
「そこは察しようよ」
「さっきと言ってることが全く違うぞ。だから嫌なの。友人の情事なんて想像したくないだろ」
「そこは、察しようよ」
「それ言ってれば許してもらえると思ったら、大間違いだからな」
「ベランダで煙草でも吸って一夜明かして」
「最低の友人だよ、お前」
「冗談だよ。さすがに、そこは配慮する」
「配慮してやるってことだろ?なんも変わってねえんだよ!」
もしかすると、こういうところが振られる原因になってるんじゃなかろうか…
段々不安になってきた…
紹介した手前、うまくいってほしいと、本当に思っているんだが…
なんにせよ、友人の幸せそうな笑顔と話を聞けて一安心だった。
とりあえずは、煙草を彼にしこたま買ってもらおう。
池袋へ帰宅するべく歩き出すが、煙草の煙がやたらと良い香りに感じたのは、気のせいではあるまい。
今日の喫煙所教訓【友人の朗報は、煙草に合う】
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