カウンター席しかない小さな飲み屋2

その飲み屋は万代口の繁華街の通りに面していて、

T字路の角にあった

店内はあまり広いとは言えず、

入り口を三角形の頂点にして

左右にカウンターが広がり、

その内側がキッチンになっていた


「すいません一人なんですけど」


どうぞーと言われて中に入り、

空いていた入口から近い席へと座った


「とりあえず生で」


「うちは瓶ビールしかないんですけどよろしいですか?」


かまいませんと答えるとすぐに僕の横にある

瓶ビールの冷蔵庫からビールが出てきた


手酌でグラスに注いで、ぐっと3分の1程飲み干す

ぷしゅーーー

おっとこの表現はいけない

散々歩いてきた疲れが報われるような感覚、

思わず僕は息をついた


とりあえずつまみは何にしようかなと、

メニューに目をやる


全体的に値段は気持ち高めと言った所か

だがその値段に見合った質があるのだろうと期待して、

僕は注文をする


「すいません、刺身の盛り合わせと、地鶏ポン酢下さい」


はい刺身の盛り合わせに地鶏ポン酢ですね

お待ちくださいねー

そういってすぐにカウンターの奥から

お通しが出てきた


「はい、お通しですー、、、貝食べられますか?」


わざわざアレルギーの心配をしてくれるとは

丁寧な接客で僕みたいな人間は逆に気後れしてします

あ、ええ、はい大丈夫ですと答えて小鉢に入った

バイ貝を受け取る

僕はすぐさま届いたバイ貝を爪楊枝でほじくり出す

クルクルと貝殻を回して、うまい具合につるんと

中身が出てきたので早速口に放り込む

こりこりと弾力があり、噛むたびに貝のうまみが染み出していく


「ヒンナヒンナ」


僕は思わず独り言をいいながらタバコに火をつけた

しばらくはビール片手に頼んだ料理が出てくるのを待つ事にしよう


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