第8回「クルーズ・オブ・ザ・リビングデッド」

「クルーズ・オブ・ザ・リビングデッド」

2022年 アメリカ

監督 ジェフリー・スタン・ロバーツ


あらすじ……世界一周クルーズの真っ只中であった超豪華客船「タイタニア」で、突如として乗客の1人が死亡し蘇り、人の肉を食らい始めるという異常事態が発生。生ける死者たちが新鮮な人間の肉を求めてさまよい歩き、タイタニアの船上は一瞬にして虐殺場と化した。SOSを受け取ったアメリカ政府は、特殊部隊ネイビーシールズを派遣し、生存者の救出とゾンビの駆逐を試みる。フォード大尉率いるネイビーシールズの分隊はヘリからタイタニアに降下するが、船上には食い尽くされた死体が存在するだけでもぬけの空、船底へと向かっていく彼らは、そこで恐ろしい光景を目の当たりにする。


[レビュー]

 新感覚、ミリタリー×ゾンビ×乗り物パニックアクション映画。海を舞台にしたゾンビ映画でも屈指の完成度を誇るホラーアクションであり、特盛のアクションとノンストップの脚本、キャラクターなどB級映画ファンから絶大な支持を受けた作品だ。


 タイタニックと同じくタイタンの名前を関した豪華客船が悲劇に見舞われる……と言うのはまあ名前の時点で察せるのだが、今回降り注ぐ悲劇は氷山ではなくゾンビ。乗客の1人が発症し、逃げ場のない洋上で次々と乗客たちがゾンビ化していき、食べられていく冒頭20分は圧巻のパニック描写だ。マニュアルにない突発事態に対処しきれない船員たちや、金持ちの乗客が腕をかじられ腸をえぐられ顔面を剥がされながらゾンビの餌となっていく光景、女子供も容赦なく死んでいく展開は恐ろしい。


 次に特殊部隊が登場するが、ここはライブラリフィルム等を使いながらも非常に丁寧かつカッコよく登場する。主人公のフォード大尉の冷静沈着、それでいてジョークと小言を忘れないキャラクターや個性的な部下たちが、死がうずまく豪華客船からの脱出を図るというノンストップアクションへと展開していく。


 客船の内部は複雑であり、普通の客室からレジャー施設、ショッピング施設、運動場など様々なロケーションが用意されているため、見ていて飽きないのも面白い、実際は陸地のショッピングモールやセットを利用して撮影しているが、違和感なく豪華客船という舞台を描いている。


 閉鎖空間ではいつゾンビが襲ってくるかわからない状況を一人称視点でリアルに見せてくれるし、千単位のゾンビが押し寄せるクライマックスは手に汗握る攻防戦で展開されていく。


 プロットも面白い。客船の船底にて生存者を発見したシールズが、今度は上層階から襲いくるゾンビを相手に上へ向かっていき脱出を図るノンストップの展開に、船の針路が陸へ向かっているため、制限時間までに脱出できなければ対艦ミサイルにより船が沈められるというタイムリミットも用意され、スリリングな展開で観客を魅せていく。おまけに最後とドドーンと大爆破シーンまで見せてくれる。これぞB級映画だ。


 本作のスマッシュヒットを受けて、類似作はその後も何本か製作されている。ゾンビ×潜水艦アクションの「デプスゾンビ(22)」、海底基地を舞台に深海ゾンビが襲ってくる「パニック・オブ・シー ゾンビ襲来(23)」、そして悪名を轟かせたゾンビが初代タイタニック号を襲う、20世紀の超大作映画パロディ「タイタニック・オブ・ザ・デッド(23)」など、類似作が何個が出ているが、さすがに本家の完成度を超える作品は出ていない。当たり前か。

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