8-いやな予感


この答えをだす少し前に、夏で仕事をやめることを伝えていた。

「ほかの仕事をしてみたくなった」と上司には伝えたが、本当はそうじゃない。直属の上司と反りが合わなくなったからだ。前の部署からの上司で僕と一緒に異動してきたわけだけど、最初はものすごくかわいがってめんどうをみてくれて、仕事もできる人だったので慕っていた。ただ、前の部署を異動になった理由が、二人はできてるんじゃないか?という他のドライバーからの申し出があったからだ。そんなの事実無根だ。だって、そもそも男同士。でも、そんなの周りのドライバーが知るはずもなく、仲が良すぎるからといちゃもんをつけられたのだ。そして、その場を丸く収めるためにも異動してくれとのことだった。納得はいかなかったけど、仕事を続けるためには仕方なかったし、環境がかわるのも悪くないと思い承諾した。これがきっかけで異動したもんだから、「次の部署はもっと人が多いし、ほとんど男だから仲良くするのはよしたほうがいい」といわれた。また、もめるのはめんどうだし、仕事だけをこなそうといわれた。  


最初は僕もよくわからなかったし、以前の部署のように完全ワンマンでできるなら、別に構わないと思った。でも、実際は違った。個人プレーだけど、チームが編成されていて、協力することも多かった。だから、仕事に差し支えない程度に付き合うことにした。じゃないと、仕事にならなかった。でも、僕が少しずつ周りの溶け込みだしたころ、上司に呼び出された。

「なんで仲良くしてるんだ?もうあんなことになりたくないから、やめようといったよな?仕事しに来てるんだから、周りの男にへらへらしてるんじゃないよ」

と言われた。言い返す気にも返事する気にもなれなくて、呆れた。そんなことを言われても、仕事に影響がでるから、その話を無視したことになるが、それまで通りでいることにした。でも、また数日後今度は仕事中に多くのドライバーの前で、同じようなことを言われた。さすがに、わかってもらわないと困るから、意見したところ、頭ごなしに怒鳴られ、なにも聞き入れてもらえなかった。その日は、あまりにもひどく仕事の手が止まるほどだったので、周りのドライバーにも心配された。そりゃそうだ。情けないが、悔しすぎて僕は泣いていた。何もできない自分が悔しかった。それから、毎日のように僕の前に現れ監視されていた。周りも気を使って、話しかけないようにしていたそうだ。なにより話しかけられる雰囲気じゃなかったといわれた。それでも、僕がスタンスを変えなかったから、気に入らなかったんだろう。昼休みにまた、ものすごい声と勢いで怒鳴りかかってきた。さすがに、周りが止めに入ろうとしていたくらいだ。こんなこと言ったらゆとりだと言われるかもしれないが、今思えばパワハラだと思う。僕が誰と話をしようが、なんの話をしようが勝手だと思う。


こうしてだんだんエスカレートしていったが、僕があるとき、

「もう干渉をしないでほしい。なにもトラブルは起こさないから」

と伝えると少しだけ距離をおくようになった。ただ、今度は「あいつと仲がいいのか?とかプライベートで付き合いがあるのか?」など僕のプライベートに入り込むようになっていた。それがうっとうしくて、僕はそこをやめることにした。これが本当の理由だ。これで、僕が心まで女だったらセクハラだ。


でも、これで関係も切れると思ったら、これでは終わらなかった。

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