10-ここから人生右肩上がり
翌日、僕は意を決して、教頭に話があると伝えにいくと、時間と場所を指定され、そこに向かった。
アドバイス通り、僕は部屋に入るなり腕の傷を見せて
「先生、助けて」
「そうか。なにがあった。」
と僕の過去の話を静かに黙って最後まで聞いてくれた。
「少し休もうか。俺が全部口利いてやるから、一回帰れ。お母さんに連絡しよう。」
と言ってくれた。そしてこうも続けた。
「正直、ここで俺がお前になにをしたかなんて誰にもわからない。その時と同じようになってもおかしくない。だから、これからはそういう状況にならないように自分で自分の身も守らないとな。でも、よく話してくれた。俺はお前を裏切らないよ、信じて全部話してくれたんだろ」と。
僕はもう恥ずかしさもなく、泣いていた。
そして、後日、母が学校にきた。母を待つ間、教頭が僕に言った。
「お前の人生あの時から今が一番どん底だ。俺が教員してきて、十六、七でそんなつらい経験しているやつみたことないよ。でも、十六、七でどん底ってことは、お前の人生、これからずっと右肩上がりだからな。これからの人生多少のことじゃ辛いとは思わないよ」
その言葉は今でも、なにかにめげそうになる僕を支えている。
「あのときより辛いことなんかあるもんか、あそこがどん底なら今は少しでも右肩あがりだろ」
って自分に言い聞かせている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます