第1章はじめての彼女ができるまで第9話 対ティーンエイジャー用の暗号

通信機器なるものが世の中に出てきた。


高校2年生の頃だろうか、【ポケベル】を使用するようになった。


メッセージを10文字くらい電話からプッシュ番号の組み合わせで送れるのだ。


それだけでも当時は画期的なモノだった。


現在でも使い道はあると思う。


機体がなくても、私達の頭の中にポケベル機能が備わっている。


頭の中にダイナマイトでは無いのでどっかの博士より幾分ましだ。


なので、35歳以上の人達が、対ティーンエイジャー用の暗号として共通で使える、数字での意思疎通ツールになるのではないだろうか。


ポケベルが無くても、


322504451222412354146868


とか、


154661051268154661051268


のように、どんなに卑猥な数字の羅列でも臆することなく使用出来るのではないだろうか。



話を戻そう。


ポケベルを使用してメッセージが飛び交う。


これには、ある種のゲームの様な熱中があったと思う。打ち込みの速さと正確さは皆の賞賛に値したのだ。


公衆電話から10円で九頭龍閃さながらにメッセージを打ち込む女子高生達は皆、飛天御剣流の免許皆伝者ばかりだった。



ある日、家の近所を歩いていたらイチコに会った。


イチコとは中学時代に浅からぬ因縁のある女子だ。


私『よう、久しぶり』


イチコ『あ、久しぶりだねぇッ!元気してた!?』


と、まぁ、適当な挨拶もそこそこにお互いの近況報告などして適当な馬鹿話して、なんか話の流れでポケベルのアドレス交換もしたりした。


高校2年生になったイチコは相変わらずの喧しさだし、育つトコも育ってるようには見えない感じではあったけど、相変わらず魅力的な女だった。


私はそもそも、女子が苦手なんだと思う。


女子というか、、なんというか、、裏表のあるヤツが苦手なのだ。


さっきまで女子2人で仲良く話していたはずなのに、相手がいなくなった途端に、


『アイツなかなか離れていかないから超ウザかったぁ!w』


とか言う輩が高校にはあまりにも多い所為で、裏でナニを言われるか判らないと思って、女子との会話すら避けていた時期がある。


イチコはそういったところも無ければ女子力も無く、素で話ができる貴重な女子だった。



あー、、また、、縁が繋がっちまったなぁ、、。



なんて思いながらも、正直悪い気はしていなかった。


何度かのポケベルでのやりとりで、どうやらイチコは今の彼氏と上手くいってない事が判った。


相談に乗る体裁で何度かイチコと会い、何回目かのやりとりの中で、この煮え切らない会話に堪えられなくなり、


私『だったら私と付き合えば良いじゃん。』


とイチコに伝えた。


面と向かって、伝えた。



イチコ『、、そうだね、じゃあ、付き合ってみようか。』



、、、、、


、、、、、


、、、、、



わーお、彼女が出来た。



『ヨロシクね、変な感じするねw』


と、お互い家に帰った。



翌日、イチコに電話を掛けたら、


『ドラマ始まるから!』


と、1分で切られた。


学校も違うし、イチコと会う機会のないまま1週間が過ぎた頃、私のポケベルにこんなメッセージが送られてきた。



『ゴレン ワカレテ イチコ』



、、、、


、、、、


、、、、


『ゴレンってなにさ!?』


『そ、こ、はッ!』


『ゴメンだろうよッ!』



『ゴメンだろうよッ!!!』



『私の方こそゴメンだよッ!!!!』



私はただただ、咆哮した。



その短いメッセージは、イチコが飛天御剣流の免許皆伝ではない事と、なんかノリで付き合うって言ったイチコのノリが終わった事を告げていた。


あまりにもあんまりなので、、

この件は【はじめての彼女】としてはノーカウントとする、、。



あんにゃろうめ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る