シロイボカサタケ(Entoloma album)

 日本におけるきのこの種類は四千種とも五千種とも言われているが、実際のところ正確な数は不明である。松江城内できのこを探し始めて数ヶ月、ぼくが目にしたキノコだけでも、おそらく百種類は軽くこえるのではないかと思う。日々きのこの文献と格闘しながら種類の判別を進めてはいるが、はっきり言ってなかなか困難であり、悪戦苦闘中。ただその悪戦苦闘具合がなんとも楽しくて仕方のない日々なのである。


 そんなこんなで、今回は比較的判別が簡単であった、「シロイボカサタケ」の話である。


 イッポンシメジ科イッポンシメジ属のきのこで、学名を「Entoloma album」、漢字で書くと「白疣傘茸」である。カサの形状は円錐形から鐘形をしており、全体が黄白色を呈している。特徴はそのカサの中心に乳首の如き疣を有している部分であるが、成長度によってその疣が判別不能の場合もある。このシロイボカサタケはキイボカサタケの白色亜種だとか白色変種だとか言われており、キイボカサタケと同種判断がくだされいる文献もある。アルビノということであろうか。ぼくの使っている年代物の文献には食毒不明と書かれているが、このきのこにはムスカリンが含まれているため、大量に食べると神経系の中毒症状が現れる恐れがある。


 白色でカサの中央に突起がある造形は、なんとなく女性の乳房を思わせるので、つい口にふくみたくなる人もいるのではないだろうかと思うのだが、その際には十分注意していただきたい一品である。ちなみにぼくは乳房に似ているきのこが生えていても口にふくんだり無闇矢鱈と触ったりしないのであしからず。


 昔はきのこの色や形で毒があるかどうかが判断できるなどという俗信がまかり通っていたが、きのこをいろいろ調べてみると、結局毒を有しているきのこは、美味しそうなきのこのような気がする。嗚呼恐ろしや毒きのこ。


 でも毒きのこのほうが味は美味しい説が有力ではある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る